【大学の生化学】解糖系の各反応について詳しくみてみよう!

この記事は約7分で読めます。

こんにちは!

それでは今日も化学のお話やっていきます。

今回からは生化学について取り扱っていきますので、お付き合いよろしくお願いします!

今回のテーマはこちら!

解糖系の各反応についてわかりやすく解説!

動画はこちら↓

動画で使ったシートはこちら
解糖系原稿シート

それでは内容に入っていきます。

生物を勉強したことがある人なら、解糖系という単語を一度は聞いたことがあるかと思います。

しかし、中学や高校の生物の授業では、たとえば解糖系は「グルコースがピルビン酸になってATPが2分子得られる」といったことを暗記するだけだったという方も多いのではないでしょうか。

今回は、主に大学で生物学や生化学を勉強している人向けに、解糖系の基礎から、解糖系の各反応について詳しく、有機化学的な目線で解説していこうと思います。

スポンサーリンク

解糖系とは?

そもそも解糖系とはどういうものなのでしょうか、復習してみましょう。

ざっくりいうと、解糖系はグルコースが代謝されるうちのある一段階です。

人間が食物が摂取すると、まずは第一段階としてタンパク質がアミノ酸に、多糖が単糖に、といったように、大きな分子が小さな分子に分解されます。

その次の段階として、グルコース分子をピルビン酸分子に分解する段階があり、これを解糖系と呼びます。

この段階ではピルビン酸とともに体内でのエネルギー通貨となるアデノシン三リン酸、通称ATPおよび、次の段階でATPの生成に関わるNADHが生成されます。

↑ATPの構造


↑NADHの構造

スポンサーリンク

代謝における酸化型、還元型

人間の体内では電子を運搬する役割を持つNADH、NADPH、FADなどの補酵素が存在しています。

↑NADPHの構造

↑FADH2の構造

これらの酵素には電子を持った還元型の形と電子を失った酸化型の形が存在しています。
NAD++2e+H+ \(\rightleftharpoons\) NADH

一般に、還元型の分子が酸化型の分子に酸化されるときに、エネルギー、つまりATPが生成されます。

つまり還元型の補酵素は酸化型の補酵素よりも多くのエネルギーを持っているということですね。

解糖系で生成されるNADHものちの酸化的リン酸化という段階でATPの生成を行います。

ここについてはまた別の記事で詳しく解説しますが、ここでは、解糖系が補酵素を酸化型から還元型に変換し、エネルギーを生成する準備をしているということを把握しておけば十分です。

また、生化学で登場する反応では有機化学と同様に、一方の分子が酸化されるかわりにもう一方の分子が還元されるというように必ずペアになって反応します。

なので、どちらが酸化され、どちらが還元されているかということに注目しながら反応を観察することが非常に重要になります。

スポンサーリンク

それぞれの具体的な反応

では具体的な反応を見ていきましょう。解糖系の反応は細胞質中で行われ、全部で10段階あります。

反応の概要

解糖系では、グルコース1分子とADP2分子、NAD+2分子からピルビン酸2分子とATP2分子、NADH2分子が生成されます。

そして、これらの分子は代謝の次の段階で利用されることとなります。

これらの反応について詳しくみていきますが、ただ単に生成物と反応物が何かを見るのではなく、どういった電子の動きがあればこのような反応が成り立つかについて、少し有機化学的に考えてみましょう。

ただし、画像にある電子の動きは考えやすくするための仮想的なものなので、必ずしも正しいものではありませんが、その点はご了承願います。

まずは、反応の見ていく中で抑えておくべきポイントを理解しておきましょう。

理解しておくべきポイント

・解糖系は細胞質で行われる代謝の反応であり、グルコース1分子からピルビン酸2分子、ATP2分子、NADH2分子が得られます。

・前半の段階では分子を切断するためにATPが投入されており、後半の段階でATPを生成することで回収されています。

・途中のNADHが生成する反応においては、酵素のシステイン残基が大きな役割を持っています。

・解糖系ではATPは2分子しか生成されず、生成物がその後組み込まれる電子伝達系やクエン酸回路などがメインのATP産生源となります。

これらをなんとなく頭に入れておいて解説を見ていきましょう!

反応1から反応3

1番目から3番目の反応は、グルコースを分解してエネルギーを取り出すために、エネルギーを消費してグルコースを2分子に分解する段階になります。

反応1では、ヘキソキナーゼによってグルコース1分子のATPを消費して、6位のヒドロキシ基がリン酸化されます。

リン酸基の負電荷により、疎水性部分を主とする細胞膜やグルコースを選択的に通すトランスポータは通れなくなり、グルコースは細胞質中にとどまることができます。

反応2では、鎖状構造のグルコースに対して異性化酵素が働き、グルコース-6リン酸がフルクトース-6リン酸に変化します。

結果的に、カルボニル基が1位から2位に移動するという反応が起きています。


反応3では、ATPを1分子消費して、反応2で新しく生じた1位のヒドロキシ基がリン酸化を受けます。このようにして、2か所でリン酸化を受けたフルクトース1,6-ビスリン酸が生成します。

反応4と反応5

4番目と5番目の反応では、6個の炭素からなる糖が2つの分子に分割されます。


反応4では、3位と4位の炭素の間がアルドラーゼによって分割され、ジヒドロキシアセトンリン酸とグリセルアルデヒド3リン酸が生成します。

イメージとして、まず4位のヒドロキシ基の酸素原子から非共有電子対が炭素原子の方に流れます。

そして、炭素と炭素の間の結合の電子がプロトンに渡されると考えれば、考えやすいかと思います。


反応5では、異性化酵素によりジヒドロキシアセトンリン酸がグリセルアルデヒド3リン酸に変換されます。

つまり、結果的にはグルコース1分子からグリセルアルデヒド3リン酸が2分子生成することになります。

反応6から反応10

6番目の反応から10番目の反応は、分子からエネルギーが取り出される段階になります。

反応6は解糖系における非常に重要な反応です。この反応ではまず酵素のシステイン残基の硫黄原子がアルデヒド基に攻撃します。
そこから酸化型のNAD+がヒドリドを奪い、還元型のNADHとカルボニル基が生成し、さらに炭素に直接硫黄原子が結合している構造が生成します。

このカルボニル炭素に直接硫黄原子が結合している構造では、システイン残基を含む酵素の部分が非常に優秀な脱離基になっているととらえることができます。

言い換えると、この結合にエネルギーが蓄えられていると考えることができます。

このカルボニル炭素がリン酸からの求核攻撃を受け、図のような構造になります。

つまり、この段階では酵素の働きによってNADHが生成し、さらに分子がリン酸化されて、分子に大きなエネルギーが蓄えられることとなります。


次の反応7ではキナーゼによって反応6で生じたリン酸基が加水分解され、ここでATPが1分子生成されます。



反応8と反応9では、3位のリン酸基が2位に転移したうえで脱水され、エノラート型の分子が生成します。


最後の反応10では、分子中のリン酸基が加水分解され、さらにケトエノール互換を経てATP1分子とピルビン酸が生成します。

これで解糖系の反応は終了です。

解糖系での生成物まとめ

まとめると、ATPは反応7と反応10で1分子ずつで合計2分子、NADHは反応6で1分子生成することになります。

しかし、グルコース1分子に付きグリセルアルデヒド3リン酸は2分子生成するので、ATPは全部で4分子、NADHは全部で2分子生成することになりますが、反応1と反応3でATPを1分子ずつ消費しているので、差し引きATPは\(4-2=2\)分子得られることになります。

生成したピルビン酸はオキサロ酢酸に変換され、次の段階であるクエン酸回路に組み込まれることとなり、さらに多くのATPを生み出すことにつながります。

これらのことから、解糖系はATPを生産するメインの段階ではなく、あとの段階でATPを生成するための準備であることがわかります。

まとめ

では、今回の記事の内容は以上となります。

それぞれの反応をすべて覚える必要はありませんが、何を目的とした反応なのか、その反応によって分子にどういう意味がもたらされるのか、といったことを理解しておくと生化学の分野は非常に理解が早くなるうえにさらに面白さが増すと思います!

間違いの指摘、リクエスト、質問等あれば、Twitter(https://twitter.com/bakeneko_chem)
かお問い合わせフォームよりコメントしてくださると、助かります。

それではどうもありがとうございました!

タイトルとURLをコピーしました