こんにちは!
製薬会社で研究職をしていた沢渡です。
前回 (下の記事) に続き、今回も甲種危険物取扱者試験の「性消」について、解説していきます。
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「性消」の第二回目として、以下のトピックで第二類危険物について説明していきます。
性質と概要
第二類危険物は可燃性固体で、試験結果により、火炎による着火の危険性あるいは引火の危険性が認められた化合物が該当します。
主な特徴は下記の通りです。
・火炎によって着火しやすい固体、または\(40^\circ \rm{C}\)\(\)未満という比較的低温で引火しやすい固体であり、出火しやすくかつ燃焼が速くて消火が困難
・一般に比重は\(1\)より大きく、水に溶けないものが多い
・水と反応し、燃焼の際に硫化水素等の有毒ガスを発生するものがある
・酸化剤との接触または混合は、打撃などにより爆発する危険がある
・微粉状のものは空気中で粉塵爆発を起こしやすい
・アルミニウムのように酸、アルカリいずれにも溶けて可燃性の水素ガスを発生するものがある
火災予防と消火方法
以上の性質から、第二類危険物の火災予防として、主に以下の点に注意が必要です。
・酸化剤との接触、混合を避ける
・炎、火花、高温体との接近、加熱を避ける
・鉄粉、金属粉、マグネシウムやこれらの含有物は、水または酸との接触を避ける
・十分な換気の上、防湿して容器を密封し、冷所に保管する
・引火性固体はみだりに蒸気を発生させない
・粉塵爆発のおそれのある場合は、対策を講じる
・静電気の蓄積を防止し、電気設備は防爆構造とすること
そして、消火方法に関しては、第二類のすべての危険物に対して乾燥砂による窒息消火が有効です。
ついで、赤りん、硫黄等に対しては注水消火が、その他に関しては、性質に応じて粉末消火、ハロゲン化物消火、二酸化炭素消火などが有効です。
各化合物の性質、火災予防、消火方法
品名 | 指定数量 |
硫化りん | \(100\ \rm{kg}\)\(\) |
赤りん | |
硫黄 | |
鉄粉 | \(500\ \rm{kg}\)\(\) |
金属粉 | \(100\ \rm{kg}\)\(\) |
マグネシウム | |
引火性固体 | \(1000\ \rm{kg}\)\(\) |
第二類の主な危険物は、硫化りん、赤りん、硫黄、鉄粉、金属粉、マグネシウム、引火性固体が該当します。
それぞれの指定数量は、表に記載したとおりです。
ここからは、第二類危険物の重要なものについて解説していきます。
硫化りん
りん (\(\rm{P}\)\(\)) と硫黄 (\(\rm{S}\)\(\)) の化合物で、組成比により、三硫化りん (\(\rm{P}\)\(_4\rm{S}\)\(_3\))、五硫化りん (\(\rm{P}\)\(_2\rm{S}\)\(_5\))、七硫化りん (\(\rm{P}\)\(_4\rm{S}\)\(_7\)) などに区別されます。
三硫化りん \(\rm{P}\)\(_4\rm{S}\)\(_3\) |
・性状と危険性
■黄色無臭の結晶 ■極めて有毒 ■水では分解しないが、熱湯で分解して有毒で可燃性の硫化水素を発生する ■燃焼により、有毒な二酸化硫黄を発生する
・消火方法 乾燥砂、水の使用は避ける (消火効果はあるが、反応して硫化水素が発生するため) |
五硫化りん \(\rm{P}\)\(_2\rm{S}\)\(_5\) |
・性状と危険性
■淡黄色の結晶 ■極めて有毒 ■水に徐々に分解して、硫化水素を発生する ■加熱により発火、爆発する ■燃焼により、有毒な二酸化硫黄や五酸化二りんを発生する
・消火方法 三硫化りんと同じ |
七硫化りん \(\rm{P}\)\(_4\rm{S}\)\(_7\) |
・性状と危険性
■淡黄色の結晶 ■極めて有毒 ■水に徐々に分解して、硫化水素を発生する
・消火方法 三硫化りんと同じ |
赤りん \(\rm{P}\)\(\)
黄りんの同素体で、白りんまたは黄りんを250 ℃付近で数時間以上加熱すると、生成します。
・性状と危険性
■赤褐色粉末 ■水に不溶 ■加熱すると約\(400^\circ \rm{C}\)\(\)で昇華する ■\(260^\circ \rm{C}\)\(\)で発火し、有毒な五酸化二りんとなる \(4\rm{P}\)\( + 5\rm{O}\)\(_2\rightarrow 2\rm{P}\)\(_2\rm{O}\)\(_5\)
・消火方法:大量注水 ・用途:マッチの側薬 |
硫黄 \(\rm{S}\)\(\)
・性状と危険性
■黄色粉末 ■水に不溶 ■\(360^\circ \rm{C}\)\(\)で発火し、有毒な二酸化硫黄を発生する ■酸には溶けにくいが、アルカリには溶ける ■電気の不導体であるため、摩擦で発生した静電気が帯電する
・火災予防、貯蔵方法 ■酸化剤との接触は発火のおそれがある ■密栓し、通風および換気のよい冷所に保管する ■粉じんの堆積を防止する ■静電気対策を行う
・消火方法 水、乾燥砂 |
鉄粉 \(\rm{Fe}\)\(\)
・性状と危険性
■灰白色粉末 ■アルカリには溶けないが、酸に溶けて水素を発生する \(\rm{Fe + 2HCl \rightarrow FeCl_2+ H_2}\)\(\) ■浮遊する鉄粉は、点火すると粉塵爆発する
・消火方法:乾燥砂 |
金属粉
金属を細分化して粉状にすると、表面積の増大・熱伝導率の低下などの理由で燃えやすくなるため、危険性が高まります。
アルミニウム粉 \(\rm{Al}\)\(\) |
・性状と危険性
■銀白色粉末 ■水には溶けないが、酸にもアルカリにも溶けて水素を発生する (両性元素) \(2\rm{Al + 6HC\rightarrow 2AlCl_3 + 3H_2}\)\(\) \(2\rm{Al + 2NaOH + 6H_2O\rightarrow 2Na[Al(OH)_4] + 3H_2}\)\(\) ■空気中の水分およびハロゲン元素と触れて、自然発火する可能性がある ■水と接触すると水素を発生する ■酸化物との混合は加熱、衝撃、摩擦により発火する
・消火方法 乾燥砂、金属火災用粉末消化器。 水は厳禁 (反応して水素ガスが発生するため)。 |
亜鉛粉 \(\rm{Zn}\)\(\) |
・性状と危険性
■灰青色粉末 ■水と徐々に反応して水素を発生する ■両性元素で、酸にもアルカリにも溶けて水素を発生する ■硫黄などと混合して加熱すると、硫化亜鉛を生じる ■酸化物との混合は加熱、衝撃、摩擦により発火する
・消火方法 乾燥砂 |
マグネシウム \(\rm{Mg}\)\(\)
・性状と危険性
■銀白色固体 ■水に不溶だが、希薄な酸、温水に溶けて水素を発生する ■水と徐々に反応して、水素を発生する ■湿った空気中では、速やかに光沢を失って鈍い色となり、自然発火することがある ■燃焼すると、白色の光を放って、酸化マグネシウムになる ■酸化物との混合は、加熱、衝撃、摩擦により発火する
・消火方法 乾燥砂、金属火災用粉末消化器。 水は厳禁 (反応して水素ガスが発生するため)。 |
引火性固体
固形アルコール、その他常圧で引火点が\(40^\circ \rm{C}\)\(\)未満のものをいい、常温で可燃性蒸気を発生し、火気等により引火の危険性が高いという特徴があります。
固体アルコール |
・性状と危険性
■乳白色寒天状固体 ■メタノールあるいはエタノールに凝固剤を加えて固めたもの ■容器を密栓しないと、アルコールが蒸発する ■\(20^\circ \rm{C}\)\(\)で可燃性蒸気を発生するため、引火しやすい
・消火剤:乾燥砂、粉末消火器等 ・用途:固形燃料 (登山用)、ゴムのり、ラッパーカテ |
まとめ
今回の記事の内容は以上となります。
次回は第三類危険物について解説していくので、ぜひそちらも視聴してください!
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それでは、どうもありがとうございました!