【大学の生化学】電子伝達系の各反応についてわかりやすく解説! – ばけライフ

【大学の生化学】代謝における電子伝達系についてわかりやすく解説!

こんにちは!

それでは今日も化学のお話やっていきます。

今回のテーマはこちら!

電子伝達系についてわかりやすく解説!

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電子伝達系

解糖系、クエン酸回路に続いて今回は電子伝達系について解説していきます!

電子伝達系という名前から電子が流れることは想像つくと思いますが、実際にどのような反応が起きているのでしょうか。

細かい部分まで詳しくみていきましょう!

まずは電子伝達系が行われるミトコンドリアの構造について、そして電子伝達系の概要、さらに具体的に行われるそれぞれの反応について解説、という流れで説明していきます。

練習問題もありますので、ぜひ取り組んでみてください!

ミトコンドリアの構造

ミトコンドリアは外膜、内膜という二重の膜を持っており、外膜と内膜の間の空間を膜間腔、内膜の内側にある部分をマトリックスと言います。

外膜はある程度以下の分子量を持つ分子を通すので、イオンなどの組成は細胞質中とほぼ同じとなっています。

しかし、内膜は特定の分子やイオン以外のものは通さないので、マトリックスの組成は膜間腔とは異なるものになっています。

これを踏まえて、電子伝達系の内容に入っていきましょう。

電子伝達系で起きている反応

概要

最初に、電子伝達系の概要について解説します。

電子伝達系はミトコンドリアの内膜で行われます。

クエン酸回路で生成したNADH、FADH2といった還元された分子から電子が放出され、それに共役して水素イオンがマトリックスから膜間腔へと汲みだされていきます

そして、汲みだされた水素イオンは再びマトリックスに流れ込み、その時のエネルギーによってATPが生成されます。

この過程で、NADHが電子を放出してNADに変換され、水素イオンが放出された電子と酸素を受け取って水が生成します。

では詳しく反応を見ていきましょう。

酵素複合体により電子が受け渡される

では、それぞれの反応を見ていきましょう。

電子伝達系では、3種類の酵素複合体によって電子が運ばれ、そのエネルギーで水素イオンが汲みだされます。

一つ目の酵素複合体はNADHデヒドロゲナーゼです。

この酵素複合体では、1分子のNADHが2分子の電子を放出し、この時水素イオンが膜間腔側に汲みだされます。

次に、この電子がユビキノンというタンパク質によって運ばれ、二つ目の酵素複合体であるシトクロムcレダクターゼ複合体に受け渡されます。

ここでも水素イオンが汲みだされ、電子はシトクロムcというタンパク質によって運搬されます。

最後に、3つ目の酵素複合体であるシトクロムcオキシダーゼでも水素イオンが汲みだされます。

最終的にこの電子が水素イオンに受け渡され、酸素と結合して水が生成されます。

水素イオンが再びマトリックスに流れ込む

では、水素イオンがマトリックス側に流れ込む段階に注目していきましょう。

水素イオンは内膜を挟んだ両側の電気的な勾配によって、受動的にマトリックス側に流れます。

この電気的な勾配は2種類の力から構成されます。

1つ目は、膜電位による駆動力です。

膜間腔では、マトリックスと比較して膜電位が高く、そのため正の電荷を帯びている水素イオンはマトリックス側へ流れようとします。

これが膜電位による駆動力です。

もう一つの力は、膜間腔とマトリックスのpHの差、つまり水素イオンの濃度差による浸透圧です。

膜間腔側はマトリックス側よりもpHが低い、つまり膜間腔側の方が水素イオン濃度が高くなっているので、浸透圧によってマトリックス側へ水素イオンは流れようとします。

この二つの力によって水素イオンはマトリックス側に流れ、この時に酵素によってATPが生成されることになります。

ATP合成酵素によるATPの生成

では、ATPが生成される段階に注目していきましょう。

水素イオンが流れ込むときに、内膜に埋め込まれているATP合成酵素によってATPが生成されます。

ATP合成酵素は上の図のような構造になっています。

水素イオンが流れ込むたびに酵素の中心軸が回転し、頭部が回転するエネルギーでリン酸とADPが結合し、ATPが生成されます。

また、この酵素は可逆的な装置であり、逆の反応も行うことができます。

練習問題

それでは、ここで練習問題に取り組んでみましょう。

Q1. ATP合成酵素によってATPが生成する反応の逆反応とは、具体的にどのような反応なのでしょうか。

Q2. この酵素がどちら向きの反応を進めるのか、決定づけている要素はどのようなものでしょうか。

答え
では答えです。

Q1. この酵素の逆の反応とは、細胞がATPを消費して、そのエネルギーで水素イオンをマトリックスから膜間腔側に汲みだすという反応になります。

Q2. 細胞内のATPの割合が低くなってくると、細胞は水素イオンのエネルギーを利用してATPを合成する方向にはたらきます。

しかし、内膜を挟んだ水素イオン濃度のバランスが崩れると、ATPを消費して水素イオンを汲み出します。

通常ではこの酵素がATPを消費する反応を行うことはあまりありませんが、異常が発生するとこの酵素は正しい状態に戻そうと働くということになります。

グルコース1分子から合成されるATPの数

最後に、グルコース1分子を酸化するたびにどれだけのATPが生成されるか、計算してみましょう。

1分子のNADHから2.5分子のATPが生成され、1分子のFADH2が生成されます。

解糖系からは、ATPが2分子とNADHが2分子生成されますが、解糖系から生成されるNADHはマトリックスまで運搬されるまでにエネルギーが消費されるのでここからはATPが3分子生成します。

ピルビン酸の酸化によってNADH2分子生成されここからATPが5分子できます。

クエン酸回路からNADH6分子生成されてここからATP15分子、FADH2が2分子からATP3分子、そしてGDP2分子生成します。

これらを合計すると、グルコース1分子からATPが\(2+3+5+15+3+2=30\)分子生成されることになります。

また、エネルギー以外の生成物に注目すると、グルコース1分子から二酸化炭素6分子と水分子6分子生成されることになります。

まとめ

それでは、今回の内容は以上となります。

次回の生化学の動画では、解糖系と糖新生の協調的調節について考えていこうと思いますので、お楽しみに!

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それではどうもありがとうございました!

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