こんにちは!
それでは今日も、細胞生物学のお話しをやっていきます。
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細胞周期原稿シート
それでは内容に入っていきます!
細胞周期について
細胞周期とは、あらゆる生物の増殖に不可欠で、大量のDNAを正確に複製し、遺伝的に同一な娘細胞へと分配することです。
細胞周期は、核と細胞質の分裂が行われるM期と、細胞が大きく成長し、DNAや細胞小器官が複製される間期に分けられます。
間期には、G1期、S期、G2期があり、増殖のための条件が適切であるか、細胞内外の環境を常に監視しています。
細胞周期制御系
続いて、細胞周期制御系についてお話しします。
細胞周期制御系とは、正確にすべてのDNAと細胞小器官を複製し、順序正しく分裂が行われるようにするための、複雑な調節タンパクのネットワークのことです。
この細胞周期制御系では、各過程が完了してから次の過程が始まるように常にフィードバックを行っています。
ある移行点で周期を止めるための分子のブレーキをチェックポイントといいます。
M期からG1期では、すべての染色体が正しく有糸分裂紡錘体に接着したかをチェックし、G1期からS期では細胞内外の環境が整っているかをチェックします。
G2期からM期では、DNAの複製が完了していること、DNAの損傷が修復されていることをチェックしています。
細胞周期の進行に必要な分子
続いて、細胞周期の進行に必要な分子を紹介します。
細胞周期の進行には、サイクリン依存タンパクキナーゼ(以下、Cdkと表記します)とサイクリンが必要です。
このCdkは、増殖中の細胞に常に存在し、必要な時に活性化され、必要がなくなるとただちに不活性化されます。
細胞周期の進行は、Cdkの活性化・不活性化によって制御されています。
活性化・不活性化は、リン酸化と脱リン酸化によるもので、細胞がタンパク質の活性切り替えに最もよく使う手段なので、覚えておきましょう。
サイクリンは、Cdkを適切な時期に切り替える役目を持っています。
サイクリン自体には酵素活性がないのですが、Cdkはこのサイクリンが結合しないと活性化されません。
こちらは、サイクリンAに結合したリン酸化サイクリン依存タンパクキナーゼ2のタンパク質構造です。
引用:日本蛋白質構造データバンク (PDBj)
サイクリンの濃度は、細胞周期に応じて変化します。
Cdkの活性化が行われる例としては、G1期の後半、S期へ移行する際などがあります。
ほとんどの真核生物には数種類のサイクリンがあり、 数種類のCdkが細胞周期の調節に関わっています。
異なるサイクリン-Cdkの複合体は、細胞周期の異なる段階を開始させます。
G2期に働きM期へと進ませるサイクリンをMサイクリンといい、Cdkとの活性型複合体をM-Cdkと言います。
G1期後期にS期へと進ませるサイクリンを、Sサイクリン、G1/Sサイクリンといい、Cdkとともに形成される活性型複合体をS-Cdk、G1/S-Cdkと言います。
これらは、細胞内の異なる標的タンパク群をリン酸化し、細胞周期の異なる移行段階を進行させます。
適切な細胞周期の進行の仕組み
続いて、適切な時期にのみCdkの活性化が起こるようにするための、サイクリンの濃度の変化の仕組みについてお話しします。
一般的に細胞内のタンパク質の分解には、ユビキチン鎖の標識がつけられ、プロテアソームとよばれるタンパク質を分解する場所へと運ばれていきます。
活性型サイクリン-Cdkは、APCと呼ばれる後期促進複合体によって、サイクリンがユビキチン化され、プロテアソームに運ばれ分解されます。
こうすることでCdkは不活性化します。
しかし、サイクリンの濃度変化は緩やかなものであり、適切な時期に活性化・不活性化させるには、より細かな制御が必要になります。
サイクリンの濃度変化以外の制御方法として、特定のタンパク質ホスファターゼによる脱リン酸化や、Cdk阻害タンパクによる活性化の阻害があります。
例えば、 M-Cdkは、阻害キナーゼWee1によって不活性化されます。
その後、活性化させる際には、活性化ホスファターゼによって脱リン酸化させます。
他には、阻害タンパクと呼ばれるp27が活性型サイクリン-Cdkに結合することにより、不活性化させます。
理解しておくべきポイント
・細胞周期はあらゆる生物の増殖に不可欠であり、細胞が成長し、DNAが複製される間期(G1,S,G2)と、核が分裂し、細胞が2つに分かれる過程であるM期にわけられる。
・正確にすべてのDNAと細胞小器官が複製され、順序正しく分裂が行われるように 細胞周期制御系と呼ばれる複雑な調節タンパクのネットワークが存在する。
・細胞周期の適切な進行にはサイクリンとサイクリン依存タンパクキナーゼ(Cdk)が必要であり、 これらが複合体を形成して活性化する。
・ただし、適切な時期に適切なタイミングで活性化が起こるように、サイクリンの濃度が変化するだけでなく、阻害キナーゼや阻害タンパクによって一時的に不活性化されたりしている。
まとめ
はい、今回の内容は以上です。
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それではどうもありがとうございました!