【大学の物理化学】2成分混合系における理想溶液と理想気体の相図について、わかりやすく解説! – ばけライフ

【大学の物理化学】2成分混合系における理想溶液と理想気体の相図について、わかりやすく解説!

こんにちは!

それでは今日も化学のお話やっていきます。

今回のテーマはこちら!

2成分混合系について、液相が理想溶液、気相が理想気体だったときの相図を考えよう!

動画はこちら↓

動画で使ったシートはこちら(ideal phase diagram)

それでは内容に入っていきます!

2成分系における理想溶液と理想気体の平衡状態

モデル

まず、こちらが今回考えるモデルです。

2成分\(\rm{A}\)\(\)と\(\rm{B}\)\(\)はともに揮発性であり、液相と気相の両方に存在します。

液相は理想溶液、気相は理想気体です。

したがって、液相については、ラウールの法則が成り立ちます。

ラウールの法則については、こちらを参照ください。

【大学の物理化学】理想溶液と理想希薄溶液の定義と性質について、わかりやすく解説!
混合系における液相の化学ポテンシャルは、純粋なときの化学ポテンシャルを基準にモル分率によって決まります。この記事では、理想溶液と理想希薄溶液の定義と、それらについて成り立つ、ラウールの法則とヘンリーの法則の分子論的な起源について、わかりやすくまとめました。

液相中のモル分率は\(x\)、気相中のモル分率は\(y\)という文字で表します。

液相と気相それぞれの組成の関係

気相について、その全圧\(p\)は、\(\rm{A}\)\(\)の分圧\(p_\rm{A}\)\(\)と\(\rm{B}\)\(\)の分圧\(p_B\)の和なので、\(x_\rm{A}\)\(p_\rm{A}\)\(^\ast+x_\rm{B}\)\(p_\rm{B}\)\(^\ast\)となります。

また、気相は理想気体であることより、ドルトンの法則から\(y_\rm{A}\)\(=p_\rm{A}\)\(/p\)となります。

したがって、\(y_\rm{A}\)\(=x_\rm{A}\)\(p_\rm{A}\)\(^\ast/[p_\rm{B}\)\(^\ast+(p_\rm{A}\)\(^\ast-p_\rm{B}\)\(^\ast)x_\rm{A}\)\(]\)となります。

これが液相の組成と気相の組成の関係です。

\(\rm{B}\)\(\)よりも\(\rm{A}\)\(\)の方が揮発性が高いとき、つまり\(p_\rm{A}\)\(^\ast \gt p_\rm{B}\)\(^\ast\)のときには、このグラフのようにあらゆる組成において\(y_\rm{A}\)\( \gt x_\rm{A}\)\(\)となります。

なお、グラフに書かれた値は、\(p_\rm{A}\)\(^\ast/p_\rm{B}\)\(^\ast\)を表しています。

液相と気相の組成は、一般的に一致しません

気相では、揮発性が高い成分のモル分率が大きくなります。

それぞれの成分の飽和蒸気圧が等しい場合のみ、液相と気相の組成が一致することになります。

それで、先ほど求めた\(y_\rm{A}\)\(\)と\(x_\rm{A}\)\(\)の関係式を、\(x_\rm{A}\)\(\)について整理すると、\(x_\rm{A}\)\(=y_\rm{A}\)\(p_\rm{B}\)\(^\ast/[p_\rm{A}\)\(^\ast+(p_\rm{B}\)\(^\ast-p_\rm{A}\)\(^\ast)y_\rm{A}\)\(]\)となります。

\(x_\rm{B}\)\(\)も\(1-x_\rm{A}\)\(\)として、このように表されます。

蒸気圧図

これを代入すれば、全圧\(p\)と気相中の\(\rm{A}\)\(\)のモル分率\(y_\rm{A}\)\(\)の関係を導くことができます。

\(p=p_\rm{A}\)\(^\ast p_\rm{B}\)\(^\ast/[p_\rm{A}\)\(^\ast+(p_\rm{B}\)\(^\ast-p_\rm{A}\)\(^\ast)y_\rm{A}\)\(\)となります。

これをグラフにすると、このような曲線が書けます。

反比例のグラフを平行移動したものです。

横軸が\(y_\rm{A}\)\(\)、縦軸が\(p/p_\rm{A}\)\(^\ast\)です。

\(\rm{A}\)\(\)の揮発性が高いほど、全圧に占める\(\rm{A}\)\(\)の分圧が大きくなります。

液相については、ラウールの法則が成り立つので、全圧はモル分率の一次関数であり、グラフは直線になります。

 

縦軸を全圧、横軸をそれぞれのモル分率として、1つのグラフにするとこのようになります。

このように、全圧と組成の関係を表した図を蒸気圧図と呼びます。

上側が液相で、下側が気相になります。

そして、もうひとつ液相の直線と気相と曲線に囲まれた領域が存在します。

この領域は、相分離領域、略してRODと呼ばれるもので、この領域の圧力と組成は、どちらの相にも存在しないことになります。

状態変化の過程

RODが存在するとき、液相の1相状態から気相1相状態までの変化の過程はこのようになります。

\(z_\rm{A}\)\(\)は、仕込み比といって、液相と気相を合わせた全体の組成を表します。

まず、液相の点①から減圧していくと、仕込み比の組成を保ちながら直線状の点②に到達します。

ここから下の領域には、液相は存在できないので、一部が気相へ移ります。

そのとき、気相の組成は、曲線上で点②と同じ全圧となる点②’となります。

さらに減圧していくと、液相は点③、気相は③’の点をとるというように、両者がグラフの左下へ移動していきます。

そして、気相の組成が仕込み比と同じになった点④’で、すべての分子が気体になったことになります。

その直前の液相の組成が点④になります。

これ以降は、すべて気相であるため、その組成は仕込み比のまま、点④’から見て真下の点⑤へ移ります。

グラフ中では、仕込み比\(z_\rm{A}\)\(\)を表す縦方向の直線を定組成線と呼びます。

また、平衡状態にある液相の組成と気相の点を結んだ線のことを連結線、英語ではtie lineと呼びます。

てこの規則

この連結線には、てこの規則というものが成り立ちます。

ある連結線について、定組成線との交点の左側の長さを\(l_\alpha\)、右側の長さを\(l_\beta\)とします。

それぞれの相の全物質量を\(n_\alpha\)、\(n_\beta\)とすると、\(n_\alpha l_\alpha=n_\beta l_\beta\)が常に成り立ちます。

証明はこのようになります。

まず、全体の物質量\(n\)は\(n_\alpha+n_\beta\)です。

そして、\(\rm{A}\)\(\)の物質量は、\(n_\alpha x_{\rm{A}, \alpha}+n_\beta x_{\rm{A}, \beta}\)です。

これは、全物質量\(n\)と仕込み比\(z_\rm{A}\)\(\)の積とも書けます。

これを整理すると、\(n_\alpha (z_\rm{A}\)\(-x_{\rm{A}, \mathit{\alpha}})=n_\beta (x_{\rm{A}, \beta}-z_\rm{A})\)となります。

\(l_\alpha\)と\(l_\beta\)はそれぞれ\(z_\rm{A}\)\(-x_{\rm{A}, \alpha}、x_{\rm{A}, \beta}-z_\rm{A}\)に対応しています。

温度-組成図

それで、先ほどは温度を固定して圧力を変化させていましたが、今度は圧力を固定して温度を変化させてみます。

温度を変化させると、それぞれの成分の飽和蒸気圧が変化することになります。

飽和蒸気圧と温度の関係は、以前紹介したクラウジウス-クラペイロンの式で書かれます。

詳しくは、こちらを参照ください。

【大学の物理化学】単成分系の相境界における圧力と温度の関係、クラペイロンの式について、わかりやすく解説!
ギブズの相律より、単成分で2相が共存しているときには、可変度が1となります。つまり、独立なパラメータは1つだけなので、圧力は温度の関数になります。この記事では、圧力と温度の関係式をクラペイロンの式という式から導き、相図の概形を考えます。

ここで\(\Delta_\rm{vap}\)\( H\)は蒸発エンタルピー、\(R\)は気体定数です。

基準の温度を\(T_0\)とすると、温度\(T\)における飽和蒸気圧\(p^\ast(T)\)は\(p^\ast(T_0)\exp{[-(\Delta_\rm{vap} \mathit{H/R})(1/\mathit{T}-1/\mathit{T}_0)]}\)となります。

これを、先ほどの圧力と組成の関係式に代入し、温度について整理します。

ただし、ここでは蒸発エンタルピーの温度依存性を無視しています。

そのようにすると、こちらの右側のようなグラフになります。

温度と組成の関係を表した図なので、温度-組成図と呼びます。

蒸気圧図との違いとして、液相がグラフの下側、気相がグラフの上側にあるという特徴があります。

液相1相状態から気相1相状態への変化は、先ほどと全く同じように考えることができます。

仮に、溶質\(\rm{B}\)\(\)の揮発性が低いときには、溶液の温度を上げることで出てくる気体を集めて、それを凝縮し液体にすれば、純度の高い溶媒が得られます。

これを単蒸留といいます。

また、両方の成分が揮発性であったとしても、蒸留で集めてきた液体をさらに蒸留することで、純度を高めることができます。

これを複数回行うことで2成分を分離させる操作のことを一般的に分別蒸留、もしくは分留といいます。

複数回といっても、実際に何回も蒸留の操作をするわけではなくて、分留カラムの中で蒸留を繰り返させることができます。

繰り返される蒸留の回数は、理論段数といいます。

まとめ

はい、今回の内容は以上です。

間違いの指摘、リクエスト、質問等あれば、Twitter(https://twitter.com/bakeneko_chem)かお問い合わせフォームよりコメントしてくださると、助かります。

それではどうもありがとうございました!

タイトルとURLをコピーしました