こんにちは!
前回 (下の記事) に続き、今回も甲種危険物取扱者試験の「性消」について、解説していきます。
今回のテーマはこちら!
「性消」の第三回目として、以下のトピックで第三類危険物について説明していきます。
性質と概要
第三類危険物は自然発火性物質および禁水性物質で、主な性状と概要はこちらの表のとおりです。
性質 | 性状 | 概要 |
自然発火性物質 および 禁水性物質 | 液体 または 固体 |
|
火災予防と消火方法
以上の特徴から、第三類危険物の火災予防として、主に以下の点に注意が必要です。
- 禁水性のものは水との接触を避ける
- 自然発火性のものは、空気との接触、炎、火花、高温体との接触・加熱を避ける
- 通風、換気のよい冷所に小分けにして貯蔵する
- 保護液に保存するものは、保護液から露出しないようにする (例: ナトリウム)
そして、消火方法に関しては、すべての第三類危険物に対して乾燥砂が使用できます。
禁水性物質には、注水消火を避け、乾燥砂か炭酸水素塩などの粉末消火剤の使用が適切です。
自然発火性物質には、水、強化液、泡などの水系消火剤が有効です。
各物質の性質、火災予防、消火方法
ここからは、各物質の性質、火災予防、消火方法について解説していきます。
第三類の主な危険物は、カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、黄りん、アルカリ金属およびアルカリ土類金属、有機金属化合物、金属の水素化合物、金属のりん化合物、カルシウムまたはアルミニウムの炭化物、その他の化合物が該当します。
金属のりん化合物とカルシウムまたはアルミニウムの炭化物のみ、不燃性ですが、その他は可燃性です。
また、各物質の指定数量は、こちらの表のとおりです。
品名 | 燃焼性 | 指定数量 |
カリウム | ○ | \(10\ \rm{kg}\)\(\) |
ナトリウム | ○ | |
アルキルアルミニウム | ○ | |
アルキルリチウム | ○ | |
黄りん | 〇 | \(20\ \rm{kg}\)\(\) |
アルカリ金属およびアルカリ土類金属 | 〇 | \(10\ \rm{kg}\)\(\) |
有機金属化合物 | 〇 | |
金属の水素化合物 | 〇 | \(50\ \rm{kg}\)\(\) |
金属のりん化合物 | × | |
カルシウムまたはアルミニウムの炭化物 | × | \(50\ \rm{kg}\)\(\) |
その他 | 〇 | \(300\ \rm{kg}\)\(\) |
それでは、各物質の説明に移ります。
カリウム \(\rm{K}\)\(\)
・性状および危険性
・火災予防・貯蔵取扱いの注意 水分・空気に触れないように、保護液 (灯油、流動パラフィン) に完全に浸して貯蔵しておく ・消火方法 消火剤:乾燥砂、ついで金属火災用粉末消火剤 (塩化ナトリウムなど) が有効 消火効果:窒息消火 水の使用は厳禁 |
ナトリウム \(\rm{Na}\)\(\)
・性状および危険性
・火災予防・貯蔵取扱いの注意
・消火方法 消火剤:乾燥砂、ついで金属火災用粉末消火剤 (塩化ナトリウムなど) が有効 水の使用は厳禁 |
アルキルアルミニウム
アルキル基がアルミニウム原子に1つ以上結合した化合物のことで、中には、エチルアルミニウムクロライドのように、ハロゲン元素が結合したものもあります。
ベンゼン、ヘキサンなどの溶剤で希釈したものが流通しており、それらは純品より反応性が低いです。
空気または水との反応性は、炭素数やハロゲン元素が多いほど小さくなります。
トリエチルアルミニウム \(\rm{Al(C_2H_5)_3}\) |
・性状および危険性
・火災予防・貯蔵取扱いの注意
・消火方法 消火剤:効果的な消火剤はない。 乾燥砂で流出を防ぎ、火勢を制御しながら燃え尽きるまで監視する 水、ハロゲン化物は使用不可 |
アルキルリチウム
アルキル基にリチウム原子が結合した化合物です。
ノルマルブチルリチウム \(\rm{\mathit{n}-C}\)\(_4\rm{H}\)\(_9\) \(\rm{Li}\) |
・性状および危険性
・火災予防・貯蔵取扱いの注意
・消火方法 消火剤:効果的なものはない 乾燥砂で流出を防ぎ、火勢を制御しながら燃え尽きるまで監視する 水、ハロゲン化物は使用不可 |
黄りん \(\rm{P}\)\(\)
・性状および危険性
・火災予防・貯蔵取扱いの注意 ガラス、金属製容器に密封し、空気に触れないように、容器内で完全に水没貯蔵する ・消火方法 水、乾燥砂 |
アルカリ金属およびアルカリ土類金属
アルカリ金属は水素を除く1族の元素で、リチウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、 フランシウムが該当します。
この場合のアルカリ土類金属は、カルシウム以下の2族元素で、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムが該当し、反応性はアルカリ金属の方が大きいです。
リチウム \(\rm{Li}\) |
・性状および危険性
・火災予防・貯蔵取扱いの注意 灯油、流動パラフィンに沈めて保管する ・消火方法:乾燥砂 水の使用は厳禁 |
バリウム \(\rm{Ba}\) |
・性状および危険性
・消火方法:乾燥砂 水の使用は厳禁 |
有機金属化合物
炭化水素基や一酸化炭素などが金属元素と結合した化合物をいい、ここでは、先に説明したアルキルアルミニウムとアルキルリチウムを除いたものが該当します。
ジエチル亜鉛 \(\rm{Zn(C_2H_5)_2}\) |
・性状および危険性
・火災予防・蔵取扱いの注意 常に窒素などの不活性ガスの中で貯蔵する ・消火方法 粉末消火剤 水の使用は厳禁 ハロゲン系消火薬剤は、反応して有毒ガスを発生させるため、使用不可 |
金属の水素化物
水素と金属の化合物で、還元性が強く、金属の酸化物および塩化物から金属を分離します。
金属の水素化物は、元の金属に似た性質をもちます。
水素化ナトリウム \(\rm{NaH}\) |
・性状および危険性
・火災予防・貯蔵取扱いの注意 窒素封入ビンなどに密栓して貯蔵する ・消火方法:乾燥砂 水の使用は厳禁 |
水素化リチウム \(\rm{LiH}\) |
・性状および危険性 自然発火性・禁水性 ・火災予防・貯蔵取扱いの注意 窒素封入ビンなどに密栓して貯蔵する ・消火方法:乾燥砂 水の使用は厳禁 |
金属のりん化合物
りんと金属の化合物で、高温で分解してりんを生じます。
りん化カルシウム (りん化石灰) \(\rm{Ca_3P_2}\) |
・性状および危険性
・火災予防・貯蔵取扱いの注意
・消火方法:乾燥砂 水の使用は厳禁 |
カルシウムおよびアルミニウムの炭化物
炭素とカルシウムあるいはアルミニウムの化合物で、ものによっては、アセチレンやメタンなどの可燃性ガスを発生します。
炭化カルシウム (カルシウムカーバイド) \(\rm{CaC_2}\) |
・性状および危険性
・火災予防・貯蔵取扱いの注意
・消火方法 乾燥砂 水の使用は厳禁 |
炭化アルミニウム \(\rm{Al_4C_3}\) |
・性状および危険性
・火災予防・貯蔵取扱いの注意
・消火方法 乾燥砂 水の使用は厳禁 |
その他
その他の物質としては、塩素化けい素化合物が該当します。
けい素と化合した物質が塩素化された化合物です。
トリクロロシラン \(\rm{SiHCl_3}\) |
・性状および危険性
・火災予防・貯蔵取扱いの注意 酸化剤との接触を避け、水分、湿気に触れない乾燥した場所にて、密封した容器内に貯蔵する ・消火方法 乾燥砂、二酸化炭素消火、粉末消火 水の使用は厳禁 |
まとめ
今回の記事は以上です。
次回は第四類危険物について解説していくので、ぜひそちらも視聴してください!
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それでは、どうもありがとうございました!