【甲種危険物取扱者試験】性消③:第三類危険物について、わかりやすく解説 ! – ばけライフ

【甲種危険物取扱者試験】性消③:第三類危険物について、わかりやすく解説 !

こんにちは!

前回 (下の記事) に続き、今回も甲種危険物取扱者試験の「性消」について、解説していきます。

【甲種危険物取扱者試験】性消②:第二類危険物について、わかりやすく解説 !
甲種危険物取扱者試験の内、約45%が危険物の性質や火災予防、消火方法に関する問題だということはご存知でしょうか? 本記事では危険物の内、第二類の化合物に関する性質や消火方法、火災予防をまとめていますので、ぜひ読んでみてください!

今回のテーマはこちら!

第三類危険物の性質、火災予防、消火方法について、学習しよう!
動画はこちら↓

「性消」の第三回目として、以下のトピックで第三類危険物について説明していきます。

[PR]

性質と概要

第三類危険物は自然発火性物質および禁水性物質で、主な性状と概要はこちらの表のとおりです。

性質性状概要

自然発火性物質

および

禁水性物質

液体

または

固体

  • 試験結果により、空気中あるいは水と接触して発火する危険性が認められた化合物
  • それ自体は可燃性のものが多いが、不燃性のもの (例: 炭化カルシウム) もあり、常温において液体と固体がある
  • 空気または水との接触により、ただちに危険が生じるものがある (例: ナトリウムカリウム)
  • 黄りんのように自然発火性のみを有しているもの、あるいはリチウムのように禁水性のみを有しているものもあるが、ほとんどのものは両性質を有している
  • ハロゲン元素などと激しく反応し、有毒ガスを発生するものがある

火災予防と消火方法

以上の特徴から、第三類危険物の火災予防として、主に以下の点に注意が必要です。

  • 禁水性のものは水との接触を避ける
  • 自然発火性のものは、空気との接触、炎、火花、高温体との接触・加熱を避ける
  • 通風、換気のよい冷所に小分けにして貯蔵する
  • 保護液に保存するものは、保護液から露出しないようにする (例: ナトリウム)

そして、消火方法に関しては、すべての第三類危険物に対して乾燥砂が使用できます。

禁水性物質には注水消火を避け乾燥砂か炭酸水素塩などの粉末消火剤の使用が適切です。

自然発火性物質には、水、強化液、泡などの水系消火剤が有効です。

各物質の性質、火災予防、消火方法

ここからは、各物質の性質、火災予防、消火方法について解説していきます。

第三類の主な危険物は、カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、黄りん、アルカリ金属およびアルカリ土類金属、有機金属化合物、金属の水素化合物、金属のりん化合物、カルシウムまたはアルミニウムの炭化物、その他の化合物が該当します。

金属のりん化合物とカルシウムまたはアルミニウムの炭化物のみ、不燃性ですが、その他は可燃性です。

また、各物質の指定数量は、こちらの表のとおりです。

品名燃焼性指定数量
カリウム\(10\ \rm{kg}\)\(\)
ナトリウム
アルキルアルミニウム
アルキルリチウム
黄りん\(20\ \rm{kg}\)\(\)
アルカリ金属およびアルカリ土類金属\(10\ \rm{kg}\)\(\)
有機金属化合物
金属の水素化合物\(50\ \rm{kg}\)\(\)
金属のりん化合物×
カルシウムまたはアルミニウムの炭化物×\(50\ \rm{kg}\)\(\)
その他\(300\ \rm{kg}\)\(\)

それでは、各物質の説明に移ります。

カリウム \(\rm{K}\)\(\)

・性状および危険性

  1. 自然発火性・禁水性
  2. 比重:\(0.86\)、融点:\(64^\circ \rm{C}\)\(\)
  3. 銀白色の柔らかい金属
  4. 水と激しく反応して水素と熱を発生し、カリウム自身も燃える
    \(\rm{2K}\)\(+\rm{2H_2O}\) \(\rightarrow \rm{2KOH}\)\(+\rm{H_2}\)
    反応熱 \(Q = 388.5\ \rm{kJ/mol}\)\(\) (発熱反応)
    \(\rm{4K}\)\(+\rm{O_2}\) \(\rightarrow \rm{2K_2O}\)
  5. 融点以上に熱すると、紫色の炎を出して燃焼する
  6. 吸湿性がある
  7. 多くの有機物に対して、ナトリウムより強い還元作用を示す
  8. 長時間空気と接触すると自然発火するおそれがある

・火災予防・貯蔵取扱いの注意

水分・空気に触れないように、保護液 (灯油、流動パラフィン) に完全に浸して貯蔵しておく

・消火方法

消火剤:乾燥砂、ついで金属火災用粉末消火剤 (塩化ナトリウムなど) が有効

消火効果:窒息消火

水の使用は厳禁

ナトリウム \(\rm{Na}\)\(\)

・性状および危険性

  1. 自然発火性・禁水性
  2. 比重:\(0.97\)
  3. 銀白色の柔らかい金属
  4. 水と激しく反応して水素を発生し、空気中の水分やアルコールとも作用し、水素を発生する
    \(\rm{2Na}\)\(+\rm{2H_2O}\) \(\rightarrow \rm{2NaOH}\)\(+\rm{H_2}\)\(\)
    \(Q = 369.2\ \rm{kJ/mol}\)\(\) (発熱反応)
  5. 長時間空気と接触すると、自然発火するおそれがある
  6. 直接体に触れると、皮膚を炎症させる

・火災予防・貯蔵取扱いの注意

  1. 水分・空気に触れないように、保護液 (灯油、流動パラフィン) に完全に浸して貯蔵しておく
  2. 取り扱い時は、皮膚に触れないようにする

・消火方法

消火剤:乾燥砂、ついで金属火災用粉末消火剤 (塩化ナトリウムなど) が有効

水の使用は厳禁

アルキルアルミニウム

アルキル基がアルミニウム原子に1つ以上結合した化合物のことで、中には、エチルアルミニウムクロライドのように、ハロゲン元素が結合したものもあります。

ベンゼン、ヘキサンなどの溶剤で希釈したものが流通しており、それらは純品より反応性が低いです。

空気または水との反応性は、炭素数やハロゲン元素が多いほど小さくなります。

トリエチルアルミニウム \(\rm{Al(C_2H_5)_3}\)
・性状および危険性

  1. 自然発火性・禁水性
  2. 無色液体
  3. 空気中で自然発火する

・火災予防・貯蔵取扱いの注意

  1. 常に窒素などの不活性ガスの中で貯蔵し、空気または水と絶対に接触させない
  2. 耐圧性の容器を使用し、破損を防ぐため、安全弁または可溶栓をつける

・消火方法

消火剤:効果的な消火剤はない。

乾燥砂で流出を防ぎ、火勢を制御しながら燃え尽きるまで監視する

水、ハロゲン化物は使用不可

アルキルリチウム 

アルキル基にリチウム原子が結合した化合物です。

ノルマルブチルリチウム \(\rm{\mathit{n}-C}\)\(_4\rm{H}\)\(_9\) \(\rm{Li}\)
・性状および危険性

  1. 自然発火性・禁水性
  2. 黄褐色の液体
  3. 空気と接触すると白煙を生じ、やがて燃焼する
  4. 水、アルコール、アミンと激しくて反応する
  5. ベンゼン、ヘキサンなどの溶剤で希釈したものは、純度の高いものよりも反応性が低下する
  6. 目や皮膚を刺激する

・火災予防・貯蔵取扱いの注意

  1. 常に窒素などの不活性ガスの中で貯蔵し、空気または水と絶対に接触させない
  2. 耐圧性の容器を使用し、破損を防ぐため、安全弁または可溶栓をつける

・消火方法

消火剤:効果的なものはない

乾燥砂で流出を防ぎ、火勢を制御しながら燃え尽きるまで監視する

水、ハロゲン化物は使用不可

黄りん \(\rm{P}\)\(\)

・性状および危険性

  1. 自然発火性
  2. 白色淡黄色のロウ状固体
  3. 猛毒
  4. 発火点:約\(50^\circ \rm{C}\)\(\)
  5. ニラに似た特異臭を有し、水に不溶
  6. ジエチルエーテル、ベンゼン、二硫化炭素に溶ける
  7. 強アルカリ溶液と接触すると、有毒な可燃性ガス (りん化水素) を発生する
  8. 発火点が低く、空気中で徐々に酸化して発火点に達すると、自然発火し五酸化二りん(猛毒の白煙)が発生する
    \(\rm{P_4}\)\(+\rm{5O_2}\) \(\rightarrow \rm{2P_2O_5}\)

・火災予防・貯蔵取扱いの注意

ガラス、金属製容器に密封し、空気に触れないように、容器内で完全に水没貯蔵する

・消火方法

水、乾燥砂

アルカリ金属およびアルカリ土類金属

アルカリ金属は水素を除く1族の元素で、リチウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、 フランシウムが該当します。

この場合のアルカリ土類金属は、カルシウム以下の2族元素で、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムが該当し、反応性はアルカリ金属の方が大きいです。

リチウム \(\rm{Li}\)
・性状および危険性

  1. 禁水性
  2. イオン化傾向が大きく、水と反応して水素を発生する
  3. 灯油中に保管するが、比重が小さいため (\(\displaystyle 0.53\)、単体の固体中で最も軽い) 灯油に浮く
  4. 水と接触すると、常温では徐々に、高温では激しく反応し水素を発生するが、反応はナトリウムほど激しくない
    \(\rm{2Li}\)\(+\rm{2H_2O}\) \(\rightarrow \rm{2LiOH}\)\(+\rm{H_2}\)\(\)
  5. ハロゲンとは激しく反応する
  6. 加熱により燃焼して、酸化リチウムを生じる
    \(\rm{4Li}\)\(+\rm{O_2}\) \(\rightarrow \rm{2Li_2O}\)
  7. 炎色反応は赤色である

・火災予防・貯蔵取扱いの注意

灯油、流動パラフィンに沈めて保管する

・消火方法:乾燥砂

水の使用は厳禁

 バリウム \(\rm{Ba}\)
・性状および危険性

  1. 自然発火性・禁水性
  2. きわめて反応性に富み、水、アンモニア、ハロゲン、酸素、多くの酸と容易に反応する
  3. 炎色反応は黄緑色である
  4. 空気中では常温 (\(20^\circ \rm{C}\)\(\)) で表面が酸化する
  5. 水と激しく反応して水素を発生し、水酸化バリウムを生じる
    \(\rm{Ba}\)\(+\rm{2H_2O}\) \(\rightarrow \rm{Ba(OH)_2}\)\(+\rm{H_2}\)\(\)
  6. 水素中にて\(200^\circ \rm{C}\)\(\)以上で加熱すると、水素化バリウムとなる
    \(\rm{Ba}\)\(+\rm{H_2}\) \(\rightarrow \rm{BaH_2}\)

・消火方法:乾燥砂

水の使用は厳禁

有機金属化合物

炭化水素基や一酸化炭素などが金属元素と結合した化合物をいい、ここでは、先に説明したアルキルアルミニウムとアルキルリチウムを除いたものが該当します。

 ジエチル亜鉛 \(\rm{Zn(C_2H_5)_2}\)
・性状および危険性

  1. 自然発火性・禁水性
  2. 無色発光性液体
  3. アルコール、酸、水に触れると、激しく反応して可燃性のエタンガスを発生する
    \(\rm{Zn(C_2H_5)_2}\)\(+\rm{2H_2O}\) \(\rightarrow \rm{Zn(OH)_2}\)\(+\rm{2C_2H_6}\)\(\)

・火災予防・蔵取扱いの注意

常に窒素などの不活性ガスの中で貯蔵する

・消火方法

粉末消火剤

水の使用は厳禁

ハロゲン系消火薬剤は、反応して有毒ガスを発生させるため、使用不可

金属の水素化物

水素と金属の化合物で、還元性が強く、金属の酸化物および塩化物から金属を分離します。

金属の水素化物は、元の金属に似た性質をもちます

 水素化ナトリウム \(\rm{NaH}\)
・性状および危険性

  1. 自然発火性・禁水性
  2. 灰色結晶性粉末
  3. 湿った空気で分解し、水と爆発的に反応して、水酸化ナトリウムと水素を発生する
    \(\rm{NaH}\)\(+\rm{H_2O}\) \(\rightarrow \rm{NaOH}\)\(+\rm{H_2}\)\(\)
  4. 融点\(800^\circ \rm{C}\)\(\)で分解し、高温ではナトリウムと水素を発生する
    \(\rm{2NaH}\)\(\rightarrow \rm{2Na}\)\(+\rm{H_2}\)\(\)
  5. 還元性が強く、金属の酸化物および塩化物から金属を分離する

・火災予防・貯蔵取扱いの注意

窒素封入ビンなどに密栓して貯蔵する

・消火方法:乾燥砂

水の使用は厳禁

 水素化リチウム \(\rm{LiH}\)
・性状および危険性

自然発火性・禁水性

・火災予防・貯蔵取扱いの注意

窒素封入ビンなどに密栓して貯蔵する

・消火方法:乾燥砂

水の使用は厳禁

金属のりん化合物

りんと金属の化合物で、高温で分解してりんを生じます。

 りん化カルシウム  (りん化石灰) \(\rm{Ca_3P_2}\)
・性状および危険性

  1. 自然発火性・禁水性
  2. 燃焼性:不燃
  3. 暗赤色の塊状固体または粉末
  4. 水および弱酸と激しく反応し、分解すると有毒で可燃性のりん化水素 (ホスフィン) が発生する
    \(\rm{Ca_3P_2}\)\(+\rm{6H_2O}\) \(\rightarrow \rm{3Ca(OH)_2}\)\(+\rm{2PH_3}\)\(\)

・火災予防・貯蔵取扱いの注意

  1. 水、湿気に触れないように、乾燥した場所に貯蔵する
  2. 容器は密栓し、破損に注意する

・消火方法:乾燥砂

水の使用は厳禁

カルシウムおよびアルミニウムの炭化物

炭素とカルシウムあるいはアルミニウムの化合物で、ものによっては、アセチレンやメタンなどの可燃性ガスを発生します。

 炭化カルシウム (カルシウムカーバイド) \(\rm{CaC_2}\)
・性状および危険性

  1. 自然発火性・禁水性
  2. 燃焼性:不燃
  3. 白色結晶
  4. 吸湿性があり、空気中の水分と反応
  5. そのものは不燃性だが、水に分解して猛毒なアセチレンガスと熱が発生し、水酸化カルシウムとなる
    \(\rm{CaC_2}\)\(+\rm{2H_2O}\) \(\rightarrow \rm{Ca(OH)_2}\)\(+\rm{C_2H_2}\)\(\)
    \(Q = 130.3\ \rm{kJ/mol}\)\(\) (発熱反応)
  6. 高温では強い還元性を有する
  7. 高温で窒息ガスと反応させると、石灰窒素を生成する

・火災予防・貯蔵取扱いの注意

  1. 水、湿気に触れないように、乾燥した場所に貯蔵する
  2. 容器は密栓し、破損に注意する

・消火方法

乾燥砂

水の使用は厳禁

炭化アルミニウム \(\rm{Al_4C_3}\)
・性状および危険性

  1. 自然発火性・禁水性
  2. 燃焼性:不燃

・火災予防・貯蔵取扱いの注意

  1. 水、湿気に触れないように、乾燥した場所に貯蔵する
  2. 容器は密栓し、破損に注意する

・消火方法

乾燥砂

水の使用は厳禁

その他

その他の物質としては、塩素化けい素化合物が該当します。

けい素と化合した物質が塩素化された化合物です。

トリクロロシラン \(\rm{SiHCl_3}\)
・性状および危険性

  1. 自然発火性・禁水性
  2. 無色の液体
  3. 引火点:(\(-50^\circ \rm{C}\)\(\))以下
  4. 水・水蒸気と反応して発熱し、毒性および腐食性のある煙霧 (塩化水素ガス) を放出しながら、発火する危険性がある。
    \(\rm{2SiHCl_3}\)\(+\rm{3H_2O}\) \(\rightarrow \rm{(HSiO)_2O}\)\(+\rm{6HCl}\)\(\)

・火災予防・貯蔵取扱いの注意

酸化剤との接触を避け、水分、湿気に触れない乾燥した場所にて、密封した容器内に貯蔵する

・消火方法

乾燥砂、二酸化炭素消火、粉末消火

水の使用は厳禁

まとめ

今回の記事は以上です。

次回は第四類危険物について解説していくので、ぜひそちらも視聴してください!

間違いの指摘、リクエスト、質問などあれば、Twitter (https://twitter.com/bakeneko_chem)
かお問い合わせフォームよりコメントしてくださると、助かります。

それでは、どうもありがとうございました!

タイトルとURLをコピーしました