こんにちはー!
今回も化学のお話やっていきます。
今日のテーマはこちら!
今回から物理化学、有機化学に加えて高分子科学もやっていこうと思います。
化学と別の分野に分類されていることも多いんですが、僕のブログでは化学の1つの分野という扱いでやっていくつもりです。
化学メーカー行ったら高分子をやることになる人は多いので、独学の助けになれれば幸いです。
数式とか難しい言葉とかは一切入れない内容になってますので、気楽に読んでください。
動画はこちら↓
動画で使ったシートはこちら(polymer introduction)
では、まいりましょう!
高分子とは
まず高分子とはということなんですが、一言で言えばめっちゃでかい分子です。
英語ではポリマー(polymer)と呼びます。
一応、分子量1万以上とか定義はあるんですが、この数字はそこまで意識しなくて良くて、とにかくたくさんの原子が共有結合で繋がったものだと考えてもらえば結構です。
例えば、発泡スチロールになるポリスチレンという分子はこんな感じで、スチレンがずっーと繋がっている構造です。
とてもじゃないけど全体の構造式を書くことは現実的ではないので、こんなふうに()とnをつけて表します。
ポリスチレンに対してスチレンのことをモノマー(monomer)と呼び、nはモノマー単位の数を指します。
これは重合度とも呼びます。
高分子と低分子の違い
では、続いて高分子と低分子の違いについてお話します。
特異的な相互作用
まずひとつ挙げられるのが特異的な相互作用です。
分子間相互分子
水素結合を例にとってお話すると、まず、分子間相互作用があります。
これは低分子でもありますが、何が違うかというと複数の点で相互作用をすることで強固な構造体を形成することができるということです。
例えばDNAの二重らせんではアデニンとチミン、シトシンとグアニンが鎖に沿っていくつもの水素結合を形成することで、安定な構造を作ることで遺伝情報を保存しています。
細胞分裂の際には、逆に反応性を高めないといけないので、このらせんをほどくということを生体内で行っているわけです。
分子内相互作用
分子間相互作用に対して、高分子では分子内相互作用があります。
これは低分子では起こらなくて、大きな分子であるがゆえの現象であると言えます。
例えば、アミノ酸をモノマーとした高分子であるタンパク質はα−ヘリックスと呼ばれるらせん構造を部分的に形成して、特異的な立体構造を作っていることが知られています。
このらせん構造では、同じ分子内のカルボニル酸素原子とペプチド結合に含まれる窒素原子間で水素結合が形成されています。
絡み合い
また、これらは化学構造に起因する相互作用ですが、ただ長いからと言う理由だけで見られる相互作用もあります。
それがからみ合いの効果です。
絡まったコードがなかなか解けないように、高分子も絡んだらなかなか解けません。これにより架橋されていない直鎖状高分子でもゴムのような挙動が見られることがあります。
結晶化とガラス転移
続いての高分子と低分子の違いは低温での挙動に見られます。
結晶化
低分子結晶は、適当に冷やせばこんな感じで、すべての分子がきれいに整列して安定になりますが、高分子でこんなふうになることはほぼありません。
一般的に高分子結晶と呼ばれるものはこんな構造をしています。
青で囲んだ部分だけがきれいに分子が並んで結晶となっていますが、ここが架橋点のようになってどんどん非晶部分の動きを制限してきます。
その結果、全体で結晶化することができず、結晶と非晶が共存した状態になります。
耐熱性ペットボトルはこんなふうに部分的に結晶構造を入れることで、耐熱性を向上させています。
結晶では光が干渉するので、光に透かしてみると白く濁っているのが確かめられますよ。
ガラス転移
それで、高分子の整列には時間がかかるので、これよりも速い速度で冷却していくと、ガラスと言う面白い状態になります。
高分子の中にはそもそも結晶化しない、融点を持たないものもあるのでそれもガラスになります。
融点を持たない高分子の例はレジ袋に使われている低密度ポリエチレンやゴムです。
ガラスというとソーダ石灰ガラスや石英ガラスなどの無機ガラスが思い浮かぶと思いますが、これは狭義のガラスで、もっと広い意味だと、高分子、低分子、金属のガラスも含まれてきます。
これらはアモルファスとも呼ばれています。
ガラスというのは分子の配置は液体のようにバラバラなんですが、そのまま移動するためのエネルギーを失ってしまった状態のことで、固体のように弾性を示します。
しかし、実は固体か液体かという議論はいまだに決着していません。
熱力学的に最安定な平衡状態というわけではないので、めちゃくちゃゆっくり、最安定状態、つまり結晶化した状態になろうとしています。
ガラスの平衡化は一度温めたのちにゆっくり冷やすという操作で起こせる場合があって、先ほどお話しした耐熱性PETの他にも耐熱性無機ガラスがあります。
それと、実はチョコレートもガラスなんですけど、チョコレートが夏場の気温で溶けた後にそれを冷蔵庫に入れとくと部分的に白くなっていることがあります。
あれはブルーミングという現象で、十分な運動性を持った分子たちが分離した後に結晶化したものです。
液体がガラスになることはガラス転移といいます。
この現象は凝固や融解などの熱力学的な現象ではなく速度論的な現象なので、厳密には相転移現象ではないんですけど、そのように扱われることも多いです。
ガラス転移が起こる温度はガラス転移温度と言いまして、これは冷却スピードによって決まります。
身の回りの高分子ガラスというと、ポリカーボネートというものが優れた耐衝撃性があるので、スマホケースなどに使われています。
あとコロナで大活躍のアクリル板、これはポリメタクリル酸メチル、通称PMMAという高分子のガラス状態です。
生体応答
最後にもう1つ低分子との違いを言うと、生体応答が全然違います。
例えばブドウ糖とも呼ばれるα-グルコースは無茶苦茶甘いですが、でんぷんは甘くありません。
口の中でコロコロしとくとアミラーゼで分解されて低分子の糖になっていくので甘くなっていきます。
こんな感じで、基本的に動物は高分子の味を感じませんし、高分子のまま吸収することはありません。
なので、間違えても口から接種するタイプのコラーゲンや酵素の商品に騙されてはいけませんよ。
どうせ体内で分解されるので、アミノ酸を飲むのと変わりません。
高分子科学の発展
はい、では最後コラム的な感じで、高分子の発展についてお話ししていきます。
人類は長い歴史の中で高分子をうまく使ってきたんですが、実は高分子という大きな分子の存在が認められてからまだ100年ちょっとしか経ってません。
そのため、ここでお話しする内容はここ100年で起こったことだと思っていただければ結構です。
衣料品
まず、衣料品においては綿や絹などの生体高分子が高分子とも知られないまま長らく使われてきたわけですけど、それらよりも強い引張強度を持っているとして生み出された合成高分子がいわゆるナイロンです。
これら合成繊維や人工皮革の誕生は人々の暮らしを豊かにしてきました。
高分子材料
続いて高分子材料です。
一般的に高分子はその密度の割に強度が大きいです。
その特徴を生かして、車や飛行機の軽量化に用いられています。
軽い方が燃費が良くなる、低炭素社会の実現につながるというわけです。
その他にもこのような性質を持つ高分子が用途に合わせてどんどん開発されています。
医療分野
医療分野においては、生体に分解されにくいという性質や高分子材料のしなやかさ、成型加工技術の発展により、人工臓器や人工血管に使われています。
さらに近年ではドラッグデリバリーシステム、通称DDSという技術が注目を集めています。
これは有効成分を高分子でコーティングしておき、患部に到達したときにその有効成分を拡散させるという技術です。
こうすることで、薬の量を減らしたり、副作用を減らしたりできることが期待されています。
まとめ
はい、今回は練習問題はありませんので、サラッとおさらいをやって終わります。
まず、高分子とは分子量が1万を超えるような巨大分子のことでした。
大きいが故に、強固な分子間相互作用や、低分子では見られない分子内相互作用、絡み合いなどがあります。
これら高分子の低温での挙動は特異的で、部分的な結晶化やガラス転移が起こります。
ガラス状態とは分子がきれいに並ぶ前に動くエネルギーを失ってしまった非平衡状態のことで、数万年とかいうめちゃくちゃ遅いスピードで平衡状態に向かっています。
力学特性で見ると弾性的なんですが、分子の配置は液体という事で、固体か液体かという議論はまだ決着していません。
ガラス転移はあくまで速度論的な現象なので、厳密には相転移ではないんですけど、二次相転移のように扱われることもあります。
生体応答について、高分子は基本的にそのまま生体に吸収されることがないうえに、味もしません。コラーゲンや酵素は買っちゃだめですよ。
最後は高分子の発展についてお話ししました。
学問としてはまだまだ若い分野でして、化学メーカーも高分子に力を入れているところがほとんどですので、ちょっとでも興味を持っていただければと思います。
今回の内容は以上です。
それではどうもありがとうございました!