【大学の生化学】クエン酸回路の各反応について、わかりやすく解説! – ばけライフ

【大学の生化学】クエン酸回路の各反応についてわかりやすく解説!

こんにちは!

それでは今日も化学のお話をしていきます。

今回のテーマはこちら!

クエン酸回路のしくみを知ろう!

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クエン酸回路動画シート

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アセチルCoAについて

まず、クエン酸回路に必要なアセチルCoAというものについて解説していきます。

この物質は補酵素の一種であり、人間の代謝において非常に大きな役割を果たす分子になります。

解糖系で生じたピルビン酸と、代謝されて生じた脂肪酸は、ミトコンドリアマトリックスアセチルCoAに変換されます。

脂肪酸については、別の記事で解説する予定なので、ここではピルビン酸の変化についてみていきます。

マトリックスではピルビン酸脱水素酵素複合体(PDCH)というものが存在します。

このPDCHには3種類の酵素が存在し、これらの酵素によって、ピルビン酸がアセチルCoAに変換され、同時にNADH二酸化炭素が生成します。

図のように1つ目の酵素でピルビン酸が脱炭酸され、2つ目の酵素でCoAと結合し、3つ目の酵素でNADHが生成するといったイメージです。

クエン酸回路の概要

続いて、クエン酸回路の概要について見ていきます。

クエン酸回路は解糖系の次の代謝経路で、有機化合物が酸化される過程で二酸化炭素とNADH、FADH2が生じます。

FADH2の構造は、下のようになります。

NADHとFADH2は電子伝達系でATPの生産に関わるので、クエン酸回路はATP生産に向けて準備する段階だと言えます。

下の図に反応の概要を示しています。

始めに、ピルビン酸などから変換されたアセチルCoAがオキサロ酢酸と結合して、6炭素の化合物になります。

3つ目の反応で、1炭素分が酸化され二酸化炭素が放出されます。

4つ目の反応でも1炭素分酸化されて二酸化炭素を放出し、その後分子にさまざまな反応が加えられ最終的にまたオキサロ酢酸に戻ります。

これがさらに次のアセチルCoAと結合して、また同じ反応を繰り返すというのがクエン酸回路の概要になります。

具体的な反応を詳しく解説

それでは具体的な反応を見ていきましょう。

理解しておくべきポイント

これからクエン酸回路の各反応について詳しく解説していきますが、すべての反応を完璧に覚えるのはかなり大変です。

そこで、まずは理解しておきたいポイントをおさえたうえで解説を見ていきましょう。

まずは、回路の大まかな流れ、つまり炭素数の変化です。

始めのオキサロ酢酸は炭素数が4であり、アセチルCoAと結合して、炭素数が6になります。

少しずつ分子が酸化されると炭素が切り離され、最終的に炭素数が4に戻り、アセチルCoAと結合して炭素数が6に戻り、回路が一周します。

その過程でCO2が排出され、NADHが3分子、FADH2が1分子、GTPが1分子生成します。

もう1つのポイントはクエン酸回路の反応が何のために行われているか理解するという点です。

この回路で行われる構造の変換は、オキサロ酢酸を酸化してエネルギーを生み出すこと(とその準備)が大きな目的であり、途中で行われる構造の変化はそれに向けての準備ととらえてください。

それでは、反応に入っていきましょう。

反応1

1番目の反応では、アセチルCoAがオキサロ酢酸と結合し、クエン酸合成酵素によってクエン酸に変換されます。

構造だけ見ても、何が起きているのかつかみにくいので、今回も有機化学的に電子の動きを考えてみましょう。

まず、アセチルCoAのメチル基の水素が、酵素によってプロトンとして引き抜かれます。

カルボニルの\(\alpha\)位にある水素原子なので、酸性度が高くなっています。

こうしてできたアニオンがオキサロ酢酸のカルボニル基に求核攻撃することを考えてください。

そうすると、図で示したような中間体の構造になると考えられます。

あとは、カルボニル基の部分が加水分解されてクエン酸が生成します。

反応2

2番目の反応では、アコニターゼによって水分子が脱離と付加を行い、結果的にはヒドロキシ基が隣接した炭素に移動して、イソクエン酸が生成します。

反応3

3番目の反応では、イソクエン酸デヒドロゲナーゼによってイソクエン酸が脱水素されて酸化され、さらに脱炭酸されてCO2と\(\alpha\)-ケトグルタル酸が生じます。

この段階でNAD+がNADHに還元されて、NADHが1分子生成します。

反応4

4番目の反応は、\(\displaystyle \alpha\)-ケトグルタル酸が\(\displaystyle \alpha\)-ケトグルタル酸脱水素複合体を形成して、最終的にスクシニルCoAに変換される反応です。

少しややこしい反応なので、また電子の動きに注目してみましょう。

まず、CoAのシステイン残基のS原子が\(\displaystyle \alpha\)-ケトグルタル酸のカルボニル基に求核攻撃しますが、この時点でC-Sの高エネルギー結合が形成されます。

つまり、カルボニル基に結合する原子団が良い脱離基に変換されますが、これが後の反応で重要になってきます。

そして、NAD+によってヒドリドが引き抜かれ、さらに電子が図のように移動して、NADHと二酸化炭素が生じます。

この反応は記事の始めで解説した、ピルビン酸がアセチルCoAに変換される反応に非常に似ているので、ぜひ見比べてみてください。

反応5

5番目の反応では、スクシニルCoAがリン酸とスクシニルCoAシンターゼによってコハク酸に変換され、その過程でGTPが生成します。

↑GTPの構造

スクシニルCoAのカルボニル基の部分は、SCoAの部分が非常に良い脱離基なので、リン酸による求核攻撃を受けて置換されます。

その後、GDPからの攻撃を受けてリン酸基が脱離し、GTPとコハク酸が生成します。

GDPやGTPはADPやATPと少しはたらきが違う部分もありますが、生体内のエネルギー通貨になったり、細胞のシグナル伝達に必須であったりと共通点があるので、いまはATPと同じようなものと考えて大丈夫です。

反応6

6番目の反応では、コハク酸が酵素によってフマル酸に酸化されます。

このときに、FADが還元型であるFADH2に変換され、この物質もNADHと同じように電子伝達系でATPの生成を行います。

反応7


7番目の反応では、フマラーゼのはたらきでコハク酸に水が付加して、リンゴ酸となります。

反応8


最後の8番目の反応では、リンゴ酸がリンゴ酸デヒドロゲナーゼによって酸化され、その過程でNADHが生じます。

生成したオキサロ酢酸は、再びアセチルCoAと反応して、この反応を繰り返すこととなります。

まとめ

今回の記事の内容は以上です。

次回の生化学の記事では、電子伝達系について考えていこうと思います。

間違いの指摘、リクエスト、質問等あればTwitter(https://twitter.com/bakeneko_chem)かお問い合わせフォームよりコメントしてくだると助かります!

それではどうもありがとうございました!

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