こんにちはー!今回も化学のお話やっていきます。今回のテーマはこちら!
動画はこちら!
動画で使ったシートはこちら(anharmonic oscillator)
では早速行きましょう!
非調和振動子って?
まず、非調和な振動子とは何ぞやってことなんですけど、ばねで繋がった2原子分子を考えてみましょう。
このばねが振動するわけですが、原子は質点ではなく大きさを持っているので、ばねが縮んだ時に立体的な反発が生まれます。
そのためばねが短い時、調和振動子のポテンシャルより実際のポテンシャルのほうが大きいという事になります。
そして、ばねの長さが無限大の時にはそれはもはや結合が解離してしまっているのでばねの復元力は働かず、ポテンシャルは\(0\)になります。
つまり、結合長が長い領域では実際のポテンシャルは調和振動子より小さくなります。それを考慮したのがこちらの図になります。
点線が調和振動子で、実線が実際のポテンシャルです。
調和振動子であればこの平衡核間距離\(r_e\)を中心に左右対称となるんですけど、実際の系では左が上がって右が下がっているので左右非対称となります。
この調和振動子からずれた分をハミルトニアンの摂動としてエネルギーを求めてみようというのが今回のテーマになります。
ちなみにこのポテンシャル図はあくまで分かりやすくしたものであって実際のポテンシャルはもっとシャープな谷になっているのが普通なので知っておいてください。
ハミルトニアンの摂動
ではここから摂動の形を考えます。
とりあえず、ポテンシャルをマクローリン展開の形で書いてみましょう。
マクローリン展開についてはこちらの記事で解説しています。

ここで、ばねの長さが平衡核間距離に近かった場合は立体反発や結合の解離が関係しないので、ほとんど調和振動子であると考えることができます。
そのため0次、1次の項が\(0\)になるとしておきます。
2次の項は2分の1kx^2としておいて、今回は4次の項までを考えることにします。その係数は\(a\)と\(b\)にしておきます。
ではここからエネルギーの変化分を考えていきます。
エネルギーの補正項
一次摂動エネルギー
前々回の記事ででエネルギーの補正項は補正前の波動関数から出せるという事をお話ししたので、とりあえず調和振動子の波動関数を思い出してみます。
すると、こんな形になっていて、\(N_n\)が規格化定数が規格化定数です。
\(H_n\)はエルミート多項式といってこの形で与えられました。
そして、実はエルミート多項式にはある漸化式が成り立っていて、それが今回重要になっていきます。
詳しい導出は割愛させてもらいますので、気になる方だけ「エルミート多項式 漸化式」でググって頂きたいんですけど、\(\xi H_n=nH_{n-1}+\frac{1}{2}H_{n+1}\)という式が成り立ちます。
この式を使うと計算が簡単になるので、最初に少し変形をしていきます。
まず、この式の\(H_{n-1}\)と\(H_{n+1}\)をこの漸化式から書き換えます。
そして\(\xi H_n\)を表すとこんな式になります。
両辺に\xiをかけると\(\xi ^2H_n\)を\(H_{n-2}\)と\(H_n\)と\(H_{n+2}\)で表した式になります。
そしてさらに右辺の\(H_{n-2}\)、\(H_n\)、\(H_{n+2}\)を全て書き換えてまた両辺に\(\xi\)をかけたものがこの式になります。
今度は\(\xi ^3H_n\)を\(H_{n-3}\)、\(H_{n-1}\)、\(H_{n+1}\)、\(H_{n+3}\)で表すことができました。
これをもう一度行うと\(\xi ^4H_n\)を\(H_{n-4}\)、\(H_{n-2}\)、\(H_n\)、\(H_{n+2}\)、\(H_{n+4}\)で表せるという事になります。
それで、この関係を使えばエネルギーの補正項を考えることができます。
まず、一次の補正項は以前の記事の導出よりこれで表せます。
ここで、\(\mu\)は換算質量です。エルミート多項式はこのように直交性を満たすものなんですけど、ここから消える項が分かります。
一次摂動エネルギーについてはこちらをご覧ください。

換算質量についてはこちらをご覧ください。

まず、\(\xi ^3H_n\)について、先ほどの漸化式から求めたものを見ますと、\(H_n\)がありませんので、直交性よりすべて消えてしまう事になります。
よって、\(\xi ^4\)部分だけが残ることになり、エネルギーの補正項をこのように求めることができます。
二次摂動エネルギー
では続いて2次の補正項も考えますと、これも以前の動画よりこのように書けるんですが、この場合は\(\xi ^3\)だけが残ってきます。それでこのように細かく計算していきます。
それで最終的にこのようなエネルギーの値が得られます。
モースポテンシャル
では最後に非調和な振動ポテンシャルの例としてモースポテンシャルと呼ばれるこちらの式を考えてみましょう。
ここで\(D\)がポテンシャルの最小値から解離したところのポテンシャルまでの差になっていて、\(\alpha\)はカーブの曲がり具合を表すパラメータです。
このポテンシャルをマクローリン展開した際には0次と1次の項は\(0\)になっています。
そして、2次の項の係数の関係より\(\alpha\)をこのように表すことができます。
肝心な3次、4次の係数は導関数よりこのように求めることで、\(a\)と\(b\)を求めることができました。
これをエネルギーの補正項に入れることで、数値として表すことができるようになります。
そしてエネルギーを2次まで補正した際のエネルギーの変化分は\(-\frac{\hbar ^2\omega ^2}{4D}(n+\frac{1}{2})^2\)という事になります。
摂動を加える前の調和振動子はエネルギー準位の等間隔でしたが、摂動を考えると\(n\)が大きくなるにつれてだんだん間隔が大きくなってくるという事をこの式は示しています。
まとめ
という事で今回も変形が大変でしたがお疲れさまでした。今回練習問題はありませんので、最後おさらいをやって終わります。
今回は摂動法を実際に使った例として非調和な振動子の例を紹介しました。
細かい計算をもう一度おさらいすることはありませんが、エルミート多項式の漸化式をうまく使うとエネルギーの補正項をシンプルに考えることができました。
最後には、非調和な振動ポテンシャルの例として摂動によって起こることを考えました。
その結果、調和振動子では等間隔だったエネルギー準位が等間隔ではなくなり、nが大きくなるほどその間隔が広くなっていくという結果になりました。
この効果は絶対零度付近の最安定に近い状態であれば見えませんが、高エネルギーにしていくほど顕著に表れるという事になります。
次回以降の量子化学の動画では変分法に入っていく予定ですが、その準備として行列の説明をしてから変分法に入っていきます。
それではどうもありがとうございました!
物理化学のおすすめ書籍を知りたい方は、あわせてこちらの記事もチェックしてみてください。

コメント