こんにちは!それでは今回も化学のお話やっていきます。
今回のテーマはこちら!
動画はこちら↓
動画で使ったシートはこちら(hypervalent molecule)
それでは内容に入っていきます!
超原子価化合物
突然ですが、硫酸の構造式って分かりますか?
正解はこれです。
高校までだと、この構造はあまり見かけなかった気がします。
ところでこの構造、どこかおかしいところはありませんか?
そう、硫黄原子の周りの電子が8個じゃないんです!
このように形式的に原子価殻に9個以上の電子を持つ典型元素を含む化合物は超原子価化合物と呼ばれます。
また、そのようになっている原子の状態を超原子価状態といいます。
最外殻の電子数は8個になるというオクテット則(8電子則)というものがありますが、超原子価化合物はそれに従わない、ちょっと変わった化合物たちです。
このようなものが超原子価化合物に当たります。
中には5本以上の腕を持っているものもあります。
ここで問題なのが、これらがどんな立体構造を持っているのかということです。
有機化合物の立体構造を考えるときには混成軌道の考え方が有用でしたが、これでは4本腕までしか考えられません。
混成軌道についてはこちらの記事をご覧ください。
そこでもっと一般的に化合物の立体構造を考える方法を考えていきましょう。
電子間反発が小さい立体構造
基本的な考え方は、混成軌道の立体的な配置を考えた時と全く同じで、何方向に電子対が向くのかということから、最も電子管反発が小さい立体構造を考えます。
その対応表がこちらです。
nが電子対数、ここでは電子対が向く方向の数だと考えてください。
nが2~4の時は混成軌道と同じです。
nがこれより大きくなると三角両錐などという聞きなれない形をとるようになります。
試しにこの対応表を使って化合物の立体構造を予測してみましょう。
ここでbpはbonding pair(共有電子対)、lpはlone pair(孤立電子対)を指しています。
まず、五塩化リンです。
共有電子対が5つ、孤立電子対が0で、合計は5です。
したがって、こんな三角両錐型分子になります。
六フッ化硫黄では共有電子対が6つ、孤立電子対が0で、その合計は6です。
このような八面体型分子だと分かります。
孤立電子対があるとき
孤立電子対があるときには少し複雑化します。
というのが、三角両錐型や五角両錐では全ての電子対が等価ではないためです。
孤立電子対の位置が何通りか考えられるようになってしまいます。
VSEPR則
本当に安定な構造はどれなのか。
これを考えるときに有用なのがVSEPR則です。
これはValence Shell Electron Pair Repulsion(原子価殻電子対間反発)の略です。
難しい言葉ですが、その考え方は次のようなものです。
- 電子対間の反発は、その電子対の属性(共有か孤立か)の組み合わせで変わる
- 電子対間の反発の大小関係はbp-bp<bp-lp<lp-lpである
- 化合物は最も電子対間反発が小さい立体構造をとる
これだけ言われても、訳分からないと思いますので、実際の例と共に説明していきます。
考えるのは四フッ化硫黄です。
共有電子対は4つ、孤立電子対が1つで合計が5になります。
したがって電子対は三角両錐型に配置されます。
しかし、考えられる構造は次のように2通り出てきます。
ここでVSEPR則に基づき、電子対間反発を考えていきます。
ここで2つの電子対がなす角度が120 °、180 °の時は、その反発を無視できるものとして90 °の関係にある電子対間の反発のみを考えることにします。
実際に数えてみたのがこちらの表です。
両者を比較するとBの方がAよりもEbp-lp-Ebp-bp分だけ安定であることが分かります(Eは反発のエネルギー)。
したがってBの構造であることが分かり、原子だけを見た時にはこちらのシーソー型分子だということになります。
練習問題
はい、それでは同じようにして、こちらに示す三フッ化塩素の立体構造を考えてみてください。
まずは電子対の数を数えます。
共有電子対が3つと孤立電子対が2つで、その合計は5です。
したがって電子対は三角両錐型に配置されます。
問題はどこに孤立電子対があるかです。
考えられる構造は次の3パターンがあります。
90 °の関係にある電子対の組を数えるとこのようになります。
これより以下のことが言えます。
- AはBよりElp-lp-Ebp-lp分だけ安定
- AはCより2(Ebp-lp-Ebp-bp)分だけ安定
したがって、三フッ化塩素はAの立体構造を取ることになります。
原子だけを見るとT字型分子になります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はより一般的に化合物の立体構造を予想するための考え方として、電子対数と立体構造の対応関係、そしてVSEPR則を紹介しました。
オクテット則に従わずに、原子価殻に9個以上の電子を形式的に持っている典型元素を持つ化合物のことを超原子価化合物といいまして、その中には5本以上の腕を持つものも存在しています。
その場合、混成軌道だけでは立体構造を予想できませんが、5方向なら三角両錐、6方向なら八面体という風に最も反発が小さくなるような構造を予想することができます。
全て共有電子対であればこれで解決するんですが、三角両錐や五角両錐では全ての電子対が等価ではないため、孤立電子対があるときには立体構造を1つに絞り切れないということが起こります。
そこで有用なのがVSEPR則というルールで、共有電子対間の反発が最も小さく、孤立電子対間の反発が最も大きいとして、電子対間反発が最も小さくて安定な立体楮を予想することができます。
もちろん位置的に近い方が反発は大きいため、電子対のなす角が小さいものを優先してみる必要があります。
今回は以上です。どうもありがとうございました!