【大学の有機化学】逆合成解析の基本とグリーンケミストリー

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こんにちはー!

今回も化学の話題をやっていきます。

今日のテーマはこちら!

グリーンケミストリーの概念を踏まえながら、逆合成解析の手法で合成戦略を立てよう!

動画はこちら↓

動画で使ったシートはこちら(retrosynthetic analysis)

ということで早速内容に入っていきましょう。

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逆合成解析とは

今回のテーマ、逆合成解析ということなんですけど、まずその言葉の説明から入ります。

一般的に、試験等で出される有機化学の問題の多くは反応物が与えてあって、何ができるでしょうかというものです。しかし、実際に研究室に入って「有機合成やります!」っていうときにはまず目的の生成物が念頭にあって、そこから逆算してこんな試薬を用意したらええんちゃうか?っていう風にやっていくと思います。

逆合成解析とはこのように、目的の生成物から逆算して、製薬会社から買えるような簡単な化合物の中で、これとこれがあったらできるなというところまで考えることを言います。

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合成で考えるべきこと

その際、気を付けるべきことは次のようなことです。

  1. 収率
  2. コスト
  3. 温和な反応条件
  4. 毒性

学術的なことではないものもありますが、実際に企業で研究開発したり、実用化したりする場合には重要なことなので、そういう視点も養っておきましょう。

収率

目的の生成物が副生成物だったら、それを得るために大量の無駄が生じることになります。

主生成物として取れた場合でも、副生成物ができるだけ少なくように考えます。

反応によっては副生成物を使って、別事業に使う物質を作る場合もあります。

コスト

既存事業のコストを落とすことは、新たな仕事に取り掛かることよりも確実な収益アップに貢献します。

さらに環境への負荷の軽減にもつながることがあります。

温和な反応条件

高温高圧状態よりは常温常圧で触媒反応させた方が、コストも抑えられて、事故のリスクも下がります。

そのほか、一気に反応が進行してしまう場合は冷やしながら合成する、というのもここに含まれます。

反応によっては仕方ない場合も当然あるんですけど、なるべく避ける必要があります。

毒性

目的の生成物だけでなく、中間生成物、原材料、副生成物に至るまで、その毒性に配慮しないといけません。

水俣病イタイイタイ病などの公害は有害な化学物質の杜撰な管理が原因でした。

保存方法や処分方法は細かく法律で決められているので、それを遵守する必要があります。

グリーンケミストリーの原則

温和な条件を選択すること、毒性が少ない経路を確立することは、グリーンケミストリーという概念の行動原則に含まれています。

そのほかのグリーケミストリーの原則には作る段階からリサイクルを考えるというものもあります。

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合成戦略を実際に立ててみよう

じゃあ、ここからは実際に合成戦略を立てていきましょう。

多くの有機合成では、小さい化合物から大きい化合物を作るので、「ここの炭素-炭素結合はあの反応で作れるな」とか考えて目的の物質をブツブツ切っていきます。

例えばこんなふうな第3級アルコールを作ることを考えましょう。

メチル基、エチル基、プロピル基がついたアルコールです。

これをGrignard反応で作ろうとしたとき全部で3通りの切り方があります。

ここでは仮に②の反応物を使うことにします。

この反応についてはこちらの記事をご覧ください。

【大学の有機化学】アルコールの命名法、物性、合成法、反応を総まとめ!
アルコールの命名法や物性から合成法に至るまで、大学の化学で扱うアルコールの知識を1つの記事にしました!

このメチルエチルケトンは売られているので手に入りますが、ここでは仮にこのケトンが非売品だった場合にどうしたらよいかというのをさらに考えてみます。

アルコールの酸化、還元の話で、ケトンはアルコールの酸化で作れるという話をしました。

そのため、2ブタノールがあればメチルエチルケトンを作れることになります。

2-ブタノールをGrignard反応で作る方法はこの2通りが考えられます。

仮に上側の反応物を選んだとすると、全体の反応スキームはこのようになります。

生成物から必要な試薬をいきなり考えるのは難しいですが、反応によって作れる結合を見つけてそこを切るということを考えれば、全体の合成戦略が簡単に作れます。

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練習問題

こちらに示した2,2-ジメチル-1-ブタナールをこの2-メチルブタンから合成するための戦略を考えてくださいという問題です。

2-メチルブタンには活性な官能基がないので、ここからどうするかが思いつくかどうかですが、まずは生成物から順番に分解して考えてみましょう。

答え
生成物から逆算して考えるとまず、2,2-ジメチル-1-ブタナールはアルデヒドなので、第一級アルコールをPCCで酸化させることで得られます。

そしてそのアルコールは出発物質の2-メチルブタンより炭素数が1個多いので、炭素-炭素結合を作ってあげましょう。

ここでは、Grignard試薬にホルムアルデヒドを反応させることにします。

あとはそのGrignard試薬の作り方を考えればいいだけですが、Grignard試薬を得るためには第三級ブロモアルカンが必要になります。

これを得るためにはハロゲンのラジカル連鎖反応を使います。

特にBr2を用いた反応は最も位置選択的に第三級ブロモアルカンを作ることができます。

最後にこれらの順番をひっくり返せば合成戦略が出来上がります。

まとめ

最後に今回のおさらいをしておくと、今回は逆合成解析というお話をしました。

これは分子量の大きなアルコール、ひいてはアルデヒドやケトン、もっと別のものを合成する際にも有効な考え方です。

目的の生成物をブツブツ切っていくことで、購入できるような単純な化合物まで小さくしていきます。

それを最後ひっくり返したものが合成戦略となります。

合成スキームを作る際に大切なことは、収率、コスト、温和な反応条件、毒性、再生可能性などでした。

テストで出されないかもしれませんが、重要なことなので覚えておきましょう!

ということで今回は以上です。

どうもありがとうございました!

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