こんにちは!
それでは今回も化学のお話やっていきます。
今回のテーマはこちら!
動画はこちら↓
動画で使ったシートはこちら(triatomic molecule)
それでは内容に入っていきます。
三原子分子の取り得る構造
さて、前回は等核二原子分子の話をしましたが、今回は三原子分子です。
前回の記事はこちらです。
三原子分子の形は大雑把には、直線型と折れ線型の2パターン考えることができます。
これらの形は対称性が異なるため、軌道同士の相互作用も変わってきます。
分子は電子がもつエネルギーの総和が小さくなる方の形をとることになります。
直線型分子
それでは実際に直線型として代表的な二酸化炭素を例に、その対称性を考えていきましょう。
三原子分子の対称性を考えるときにまず必要なのは、真ん中の分子を無視した外側2つの原子の相互作用を考えることです。
二酸化炭素の場合は炭素原子を無視して2つの酸素原子に着目します。
その相互作用は結合距離が長くなった酸素分子をイメージしてください。
そして今度は炭素原子のみについて考えます。
s軌道とp軌道の対称性はこのようになります。
σかπかは\(x\)軸方向から見た時に、波動関数の符号が入れ替わる節と言われる線が0本か1本かという違いです。
gとuは対称を意味するgerade(ゲラーデ)と反対称を意味するungerade(ウンゲラーデ)の頭文字で、炭素原子の中心から見て点対称か点反対称という違いです。
そして先ほど考えた2つの酸素原子が作る軌道と炭素原子の軌道で同じ対称性を持つ者同士が相互作用をすることで、もっと安定な状態ともっと不安定な状態を作ることができます。
例えばσgについて考えるとこんな感じです。
エネルギーが近い値になる軌道には大きく寄与が起こるので、一番下の分子軌道だと炭素原子の寄与が酸素原子たちの寄与より小さくなって、アンバランスな分子軌道になります。
σu、πuについてはこんな感じです。
なお、πgは炭素原子の電子軌道にはない対称性であるため相互作用は起こらず、そのまま二酸化炭素の分子軌道になります。
折れ線型分子
対して折れ線型ではどうなるのでしょうか。
ここでは代表的な水について考えていきます。
折れ線型の対称性は回転対称性と鏡映対称性で議論します。
回転対称
まずは上図で矢印を回転軸として\(180^\circ\)回すということを考えます。
すると原子の位置は回転する前とぴったり重なるわけですが、この時に分子軌道の位相(符号)が合うものをa、逆位相(逆符号)になるものをbと表して区別することができます。
鏡映対称
三原子を結ぶ平面に対して面対称となっているものは1、その面が鏡映面になっていないものを2として区別できます。
水分子の分子軌道
それでは実際に対称性を考えていきましょう。
まずは先ほどと同様に真ん中の酸素原子を無視して外側の水素原子2つについて考えます。
そして真ん中の酸素原子の電子軌道、対称性はこの通りです。
a1同士、b1同士で相互作用が起こります。
b2は酸素原子にしかありませんから、そのまま水の分子軌道になります。
両者を比べると
二酸化炭素と水の対称性を個別に考えてきましたが、両者の分子軌道はまとめると、こちらのようになります。
二酸化炭素では16個、水では8個の電子がこの分子軌道を占めることになりまして、基底状態では↑のような電子配置となります。
ここで分子軌道には3つの分類をすることができます。
まずは分子になることで安定化が起こった結合性軌道、分子になることで不安定化が起こった反結合性軌道、そして、特に安定化も不安定化も起こらなかった非結合性軌道です。
二酸化炭素ではπg、水ではb2が非結合性軌道に当たります。
思い出してみれば、二酸化炭素のπgは外側の酸素原子2つ、水のb2は真ん中の酸素原子1つだけで完結しており、別に三原子分子となった恩恵はありませんでした。
ウォルシュ図
では最後にウォルシュ図というものについて紹介します。
これはその分子がどのような結合角をとるのが安定なのかということを一般的に考えたものになります。
一言に折れ線型と言ってもその結合角は常に\(109.5^\circ\)ではないので、連続的に結合角を変化させたときにエネルギーがどのような変化を予想することができます。
何らかの原子Aを中心にしたAH2という分子について結合角を\(90^\circ\)にしたときの折れ線型、そして結合角が\(180^\circ\)の直線型の分子軌道は、このようになります。
軌道によって複雑な大小関係になりまして、電子が何個あるかによってどっちが安定なのか、ということが決まります。
そして実際に計算した結果は電子が5個未満の場合には直線型、5個から8個ある場合には折れ線型であるという予想になります。
このことより、例えば水素化ベリリウムBeH2は直線型、メチレンCH2は折れ線型ということが予想でき、実際にそうなります。
まとめ
それでは最後軽くおさらいをやって終わります。
今回は三原子分子について、対称性の考え方と分子軌道の形をお話ししました。
直線型ではx軸方向から見た節の本数によるσとπ、そして真ん中の原子を中心として対称か反対称かという違いで対称性を考えました。
折れ線型では180 °回転に対する対称性と三原子を結んだ平面に対する鏡映対称性によって考えました。
こうして考えた分子軌道は3つに分類することができまして、分子ができたことにより安定化が起こった結合性軌道、不安定化が起こった反結合性軌道、どちらも起こらなかった非結合性軌道があります。
より一般的に結合角を考えるにはウォルシュ図というものがありまして、電子の個数によってその分子に有利な構造がどう変わるのかを説明するものとなっています。
中心元素をAとしてAH2という三原子分子についてこのウォルシュ図を考えると、電子が全部で5個未満だったときは直線型、5個から8個のときは折れ線型が予想されて、水素化ベリリウムやメチレンは実際にこの通りになります。
今回は以上です。
どうもありがとうございました!