こんにちは!
今回も化学のお話やっていきます。
今日のテーマはこちら!
動画はこちら↓
動画で使ったシートはこちら(polymer introduction)
高分子とは
高分子を一言で言うと、とても大きな分子のことです。
英語では、ポリマー(polymer)と呼びます。
一応、分子量1万以上とか定義はあるのですが、この数字はそこまで重要ではなく、とにかく多くの原子が共有結合で繋がったものだと考えてもらえば結構です。
例えば、発泡スチロールになるポリスチレンという分子は、スチレンを繰り返し単位として、たくさん繋がっている構造です。
全体の構造式を書くことは現実的ではないので、かっことnをつけて表します。
ポリスチレンに対してスチレンのことをモノマー(monomer)と呼び、nはモノマー単位の数を指します。
nのことは、重合度と呼びます。
高分子と低分子の違い
続いて、高分子と低分子の違いについてお話します。
特異的な相互作用
分子間相互分子
水素結合を例にお話しすると、まず、分子間相互作用があります。
これは低分子でもありますが、何が違うかというと複数の点で相互作用をすることで強固な構造体を形成できることです。
例えば、DNAの二重らせんではアデニンとチミン、シトシンとグアニンが鎖に沿っていくつもの水素結合を形成することで、安定な構造を形成し、遺伝情報を保存しています。
細胞分裂の際には、逆に反応性を高めないといけないので、このらせんをほどくということを生体内で行っているわけです。
分子内相互作用
分子間相互作用に対して、高分子では分子内相互作用もあります。
これは低分子では起こらなくて、大きな分子であるがゆえの現象であると言えます。
例えば、アミノ酸をモノマーとした高分子であるタンパク質は、\(\displaystyle \alpha\)−ヘリックスと呼ばれるらせん構造を部分的に形成して、特異的な立体構造を作っていることが知られています。
このらせん構造では、同じ分子内のカルボニル酸素原子とペプチド結合に含まれる窒素原子間で水素結合が形成されています。
絡み合い
また、これらは化学構造に起因する相互作用ですが、ただ長いからと言う理由だけで見られる相互作用もあります。
それがからみ合いの効果です。
絡まったコードがなかなか解けないように、高分子も絡んだらなかなか解けません。
これにより、架橋されていない直鎖状高分子でもゴムのような挙動が見られることがあります。
結晶化とガラス転移
次の違いは、低温での挙動で見られます。
結晶化
低分子結晶を普通に冷却すると、すべての分子がきれいに整列して安定になりますが、高分子でこのようになることはほぼありません。
一般的に高分子結晶と呼ばれるものは、下のような構造をしています。
青で囲んだ部分だけがきれいに分子が並んで結晶となっていますが、ここが架橋点のようになってどんどん非晶部分の動きを制限してきます。
その結果、全体で結晶化することができず、結晶と非晶が共存した状態になります。
耐熱性ペットボトルは、あえて部分的に結晶構造を入れることで、耐熱性を向上させています。
結晶では光が回折するので、光に透かしてみると、実際に白く濁っていることが確認できます。
ガラス転移
高分子の整列には時間がかかるので、これよりも速い速度で冷却していくと、ガラスという面白い状態になります。
高分子の中にはそもそも結晶化しない、融点をもたないものもありますが、それらもガラス状態にはなります。
融点をもたない高分子の例は、レジ袋に使われている低密度ポリエチレンやゴムです。
ガラスというと、ソーダ石灰ガラスや石英ガラスなどの無機ガラスが思い浮かぶと思いますが、これは狭義のガラスで、もっと広い意味だと、高分子、低分子、金属のガラスも含まれてきます。
これらはアモルファスとも呼ばれています。
ガラスとは、分子の配置が液体のようにバラバラのまま、移動するためのエネルギーを失ってしまった状態のことで、固体のような弾性を示します。
しかし、実は固体か液体かという議論はいまだに決着していません。
熱力学的に最安定な平衡状態というわけではないので、とてもゆっくり、最安定状態、つまり結晶化した状態になろうとしています。
ガラスの平衡化は、一度温めたのちにゆっくり冷やすという操作で促進できるため、先ほどお話しした耐熱性ペットボトルを作ることに利用されています。
これは余談ですが、実はチョコレートもガラス状態です。
夏場の気温で溶けた後にそれを冷蔵庫に入れておくと、部分的に白くなっていることがあります。
あれはブルーミングという現象で、十分な運動性をもった分子たちが分離した後に結晶化したものです。
液体がガラスになることは、ガラス転移といいます。
この現象は、凝固や融解などの熱力学的な現象ではなく速度論的な現象なので、厳密には相転移現象ではないのですが、そのように扱われることも多いです。
ガラス転移が起こる温度はガラス転移温度と言い、これは冷却スピードによって決まります。
身の回りの高分子ガラスというと、ポリカーボネートというものが優れた耐衝撃性があるので、スマホケースなどに使われています。
あとコロナ禍で活躍したアクリル板、これはポリメタクリル酸メチル、通称PMMAという高分子のガラス状態です。
生体応答
最後に、もう1つ低分子との違いを言うと、生体応答が全然違います。
例えば、ブドウ糖とも呼ばれる\(\displaystyle \alpha\)-グルコースはとても甘いですが、その多量体であるデンプンは甘くありません。
口の中でアミラーゼで分解されると、短い糖鎖になって、わずかに甘みを感じるようになります。
このように、基本的に動物は高分子の味を感じませんし、高分子のまま吸収することはありません。
口から接種するタイプのコラーゲンや酵素の健康食品も、どうせ体内で分解されるので、アミノ酸を飲むのと変わりません。
高分子科学の発展
最後にコラムとして、高分子の発展についてお話しします。
人類は、長い歴史の中で高分子をうまく使ってきたのですが、実は、高分子という大きな分子の存在が認められてからはまだ100年ほどしか経ってません。
高分子科学は、未だに発展途上なのです。
衣料品
衣料品については、綿や絹などの生体高分子が高分子とも知られないまま長らく使われてきました。
それらよりも強い引張強度をもっているとして生み出された合成高分子がいわゆるナイロンです。
これら合成繊維や人工皮革の誕生は、人々の暮らしを豊かにしてきました。
高分子材料
一般的に、高分子はその密度の割に強度が大きいです。
その特徴を生かして、高分子材料は車や飛行機の軽量化に用いられています。
軽い方が燃費が良くなるため、低炭素社会の実現に繋がるというわけです。
その他にも、このような性質をもつ高分子が用途に合わせてどんどん開発されています。
医療分野
医療分野においては、適度にしなやかで生体に分解されにくいという性質や成型加工技術の発展により、人工臓器や人工血管に使われています。
さらに近年ではドラッグデリバリーシステム、通称DDSという技術が注目を集めています。
これは有効成分を高分子でコーティングしておき、患部に到達したときにその有効成分を拡散させるという技術です。
こうすることで、薬の量を減らしたり、副作用を減らしたりできることが期待されています。
まとめ
今回の内容は以上です。
間違いの指摘、リクエスト、質問等あれば、Twitter(https://twitter.com/bakeneko_chem)かお問い合わせフォームよりコメントしてくださると、助かります。
それではどうもありがとうございました!