【大学の有機化学】アルケンの主要な反応まとめ!(求電子付加反応の立体特異性や位置選択性など)

この記事は約18分で読めます。

こんにちは!

それでは今回も化学の話やっていきます。

今回のテーマは、こちら!

アルケンの主要な反応について、見ていこう!

動画はこちら↓

動画で使ったシートはこちら(alkene reaction 1alkene reaction 2alkene reaction 3)

それでは内容に入っていきます!

(動画part1の内容)

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付加反応の熱力学

まず、アルケンの特徴といえば二重結合を持っていることですが、π結合はσ結合に比べると、軌道の重なりが小さくて弱いので、ここでいろいろ反応が起こります。

最初に、そのエンタルピー変化を考えておきましょう。

二重結合にA-Bという分子が付加する反応は、分割して考えると、π結合の解離、A-B結合の解離、2本のσ結合形成となります。

したがって、それぞれの標準エンタルピー\(DH^\circ\)を使うと、全体のエンタルピー変化\(\Delta H^\circ\)はこのように書けます。

この\(\Delta H^\circ\)が負の値であれば発熱反応であり、安定な生成物が得られます。

実際、エチレンに水素を付加させたときのエンタルピーはこのように計算され、発熱反応となります。

ただし、このエンタルピーの値は、π結合がなくなったことによるσ結合の強さの変化を考えない概算値です。

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触媒存在下における水素付加反応の機構

それで、エチレンに対する水素の付加反応は発熱反応なんですが、エチレンガスと水素ガスを混ぜて\(200^\circ C\)程度に加熱するくらいでは、エタンは生成しません

これは活性化エネルギーがとても大きいからであり、多くの場合は不均一触媒が使われます。

不均一なので、触媒と基質は混ざってなくて、触媒の表面で反応が起こります。

中学で習う過酸化水素と二酸化マンガンで、酸素が発生するという反応も不均一触媒系の例です。

よく使われるのは、こちらに示したパラジウム、白金、ニッケルなどを用いた触媒です。

これらは、他にもいろんな反応で触媒として使われるので、またちょくちょく見ると思います。

それで、不均一触媒の表面で何が起こっているのかを説明します。

まず、触媒表面に水素分子が近づいてくると、安定なH-H結合を解離させて、このように表面に水素が生えた形になります。

ここにアルケンのπ結合が近づいてくるとπ電子が触媒と結合を作り、同時に1つ水素が基質にひっつきます。

あとは、基質が表面から離れるときにこのような電子の移動が起こり、水素の付加反応が完了します。

この反応の中で触媒は、安定な水素分子の結合を解離させることで活性な状態にする働きを担っています。

そして、この触媒を用いた付加反応は立体特異的であり、例えば↓の1-エチル-2-メチルシクロヘキセンに対して、水素を付加させると、これら2つのラセミ混合物が得られます。

π結合を形成する炭素はsp2混成で平面構造を取りますが、その平面に対して2つの水素原子は同じ方へ付きます。

ただし、面の上から付くか下から付くかはランダムであるため、ラセミ体となります。

このような付加のしかたはシン(syn)付加と言います。

これに対して、平面の反対側に付加する反応はアンチ(anti)付加といいます。

そしてさっき、平面に対して上から付加するか下から付加するかは、ランダムだと言ったのですが、触媒がキラルな場合は選択的に一方のエナンチオマーが得られることもあります

例えば、パーキンソン病の治療薬を工業的に作る過程では、キラルなロジウム触媒を均一系で作用させることで、S体を高い収率で得ています。

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求電子付加反応

続いて、ここからは求電子付加反応について、お話していきます。

π結合は、σ結合よりも弱く、電子の束縛は緩いため、分極しやすくなっています。

また、孤立電子対とまではいかないですが、Lewis塩基のように求核的な挙動を示します。

求電子付加反応とは、求電子剤との間で反応が起こることで進行する付加反応のことです。

ハロゲン化水素の付加

それではまず、最も簡単な求電子剤であるプロトンとの反応を見ていきます。

用いるのは、ハロゲン化水素です。

π電子は求核的なので、プロトンに攻撃することでカルボカチオンが生成し、それからハロゲン化物イオンが攻撃して、ハロアルカンが生成します。

もちろんですが、立体は保持されません。

そして、この反応は逆に見るとE1反応になります。

つまり、化学平衡になると言うことです。

そして、π結合を作っていた2つの炭素原子のどっちにハロゲンが付くのかというのは選択性がありまして、置換基がより多い方に付きます

この法則はMarkovnikov(マルコフニコフ)則と呼ばれます。

なぜそうなるのかは、反応機構を見るとわかります。

中間体であるカルボカチオンは第三級が最も安定となるため、置換のより少ない炭素側にプロトンがひっつきます。

それから、カチオン中心の炭素原子にハロゲン化物イオンが求核攻撃するので、Markovnikov則に従うことになります。

そして、カルボカチオン中間体を経由するため、反応の途中で、このように転位が起こることもあります

プロトンを用いた水和反応

続いて、プロトンを用いた求電子水和反応についてお話しします。

さっきのハロゲン化水素同様に、希硫酸を使ってアルケンに水を付加させる反応は、E1反応とその逆反応で化学平衡となります。

アルケンとアルコールどっちに傾かせるかは、こんな感じで水の量と温度でコントロールできます。

また、ここではちゃんとアルケンまで平衡となっていることがミソで、カルボカチオンのときに転位が起こってからアルケンに戻るということも起こります。

多置換アルケンほど安定であるため、このような末端アルケンに酸を加えると内部アルケンに変換することが可能になります。

(動画2の内容)

ハロゲン分子の付加

四塩化炭素など安定なハロメタンを溶媒として、アルケンにハロゲン分子を反応させると、ジハロアルカンができます。

ただし、ハロゲンといっても塩素と臭素だけです。

フッ素では、一気に反応が起こってしまって、こんなふうにうまく付加しません。

ヨウ素の場合はC-I結合が弱いため、熱力学的に不利になります。

そして、この反応は立体特異的であり、アンチ付加で進行します。

例えば、シクロヘキセンに臭素を加えると、このようなラセミ混合物が得られます。

なぜ、アンチ付加なのかというと、次のような反応機構が考えられています。

ここでは、ハロゲン分子の中で、一方の原子が正、もう一方が負に分極することを考えています。

π電子が正に分極したハロゲンに攻撃すると同時にもう一方のハロゲン原子はイオンとして脱離することで、↑のような三員環のカチオンを形成します。

これをハロニウムイオンと呼びまして、特に臭素の場合はブロモニウムイオン、塩素の場合は、クロロニウムイオンと言います。

ここに、ハロゲン化物イオンがSN2機構で求核攻撃することで開環し、アンチ付加体が得られます。

ちなみに、臭素Br2は有色であるため、アルケンの存在を目で確認するテストができます。

ハロゲン+他の求核剤(過剰量)

そして、求核剤は必ずしもハロゲン化物イオンである必要はなく、他の求核剤が過剰量ある場合には、ハロゲンとそのもう1つの置換基がアンチ付加します。

例えば、水を溶媒にして臭素を付加させようとすると、水が求核剤となってブロモニウムイオンに攻撃し、ハロアルコールが生成します。

このとき、臭化水素が同時に生成します。

この反応は位置選択的でもあり、置換がより少ない方の炭素にハロゲンがつきやすいです。

これは、カルボカチオンの安定性により、置換の多い炭素が正に分極するからです。

同様に付加する他の反応剤

また、アンチ付加する求電子剤は、ハロゲンの単体だけではなくて、ここに示したものでも同じように起こります。

棒で示した単結合の左側が三員環のカチオンを作る部分で、右側が求核剤になる部分です。

それぞれをAとBで表したとすると、2-メチルプロペンにはこのように付加したものが選択的に得られます。

そして、いちばん右に書いている水銀塩と水を使った反応はとても重要なので、次はこれについてお話しします。

オキシ水銀化-脱水銀化

アルケンに酢酸銀などの塩と水を反応させるとこのようにヒドロキシ基と水銀がアンチ付加したアルキル水銀になります。

この反応をオキシ水銀化反応といいます。

さらにこの生成物は、ヒドリド還元剤である水素化ホウ素ナトリウムと反応させることで、水のアンチ付加体になります。

こっちの反応は脱水銀化反応と言います。

オキシ水銀化反応の中間体としては、このようなマーキュリニウムイオンができていると考えられています。

カルボカチオン中間体を経由しないため、転位が起こらず、生成物が複雑にならないという大きなメリットがあります。

そして、ヒドリドの求核攻撃はより立体障害の少ない方の炭素へ起こりやすいため、位置選択性はプロトン酸同様に、Markovnikov則に従うことになります。

ただし、水銀反応剤は高価かつ有害なため扱いが難しく、気安く行えないというのが、欠点になります。

ヒドロホウ素化-酸化

それで、求電子水和反応として重要なものがもう1つあるので、そっちもお話しします。

それがヒドロホウ素化-酸化という方法です。

求電子剤としては、Lewis酸であるBH3ボランを使います。

ボランはそれ自体で二量体を形成することでも知られる化合物で、Lewis塩基であるTHFなどのエーテル溶液として市販されています

溶液中では、このようなオクテット則を満たす安定な複合体を形成しています。

アルケンにボランを加えるときには、そのままTHFを溶媒にします。

すると、一方に水素、もう一方にBH2という形で求電子付加します。

この反応をヒドロホウ素化といいます。

この反応はあと2回繰り返すことができて、最終的にはアルキルボランが得られることになります。

この反応は水素の付加とは異なり、触媒がなくても進行します

反応機構はこんな感じで、π電子がボランの空軌道に移ることで、四中心遷移状態を経て、付加が起こります。

この反応は立体特異的であり、シン付加となります。

また、位置選択的でもあり、ホウ素は立体障害が小さい方の炭素に付きます

このようにしてできたアルキルボランは、塩基性条件下で過酸化水素などの酸化剤と反応させると、アルコールになります。

反応機構はこんな感じで、まずアルキル基がアルコキシドに変換されます。

塩基によって、これの加水分解が起こることでアルコールとなります。

また同時にホウ酸ナトリウムが生成します

反応全体では、置換がより少ない方の炭素にヒドロキシ基が選択的につくため、Markovnikov則の真逆になります。

この位置選択性はそのまま、逆Markovnikov則と言います。

3種の求電子水和反応まとめ

最後にここまでやってきた3種類の求電子水和反応の特徴をまとめておきます。

プロトン酸を使う反応は、カルボカチオン中間体を経由するため、複雑な生成物が得られる可能性があります。

対して、オキシ水銀化-脱水銀化とヒドロホウ素化-酸化はカルボカチオン中間体を経由しないため転位が起こらず、立体は保持されます。

立体特異性は、それぞれアンチ付加、シン付加になります。

位置選択性は、プロトンとオキシ水銀化-脱水銀化がMarkovnikov則、ヒドロホウ素化-酸化が逆Markovnikov則に従います。

ヒドロキシ基をつけたところは、また別の置換基にもできますので、この表はとても大事です。

しっかり頭の中に入れておいてください。

(動画part3の内容)

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カルベンを用いたシクロプロパンの合成

まずは、アルケンからシクロプロパンを作る方法からお話しします。

π結合部分を三員環にするためには、炭素がもう1個必要で、それにはカルベンという化学種を用います。

カルベンは、↑に示すようなLewis酸で、例えばこちらのジアゾメタンに光や熱、銅などの触媒を作用させると、窒素分子が外れて、最も簡単なカルベンであるメチレンが生成します。

実際のシス-2-ブテンとメチレンの反応はこのとおりです。

アルケンの反応第二弾でお話したヒドロホウ素化と同様に、Lewis酸の空軌道にπ結合の電子対が供与され、シクロプロパンになります。

この反応は、立体を保持したまま進行します。

また炭素-炭素結合を作る有用な反応の1つでもあります。

そして、カルベンはジアゾ化合物からでなくても作ることができまして、クロロホルムがその一例です。

クロロホルムから強塩基によりプロトンを引き抜くと、そこからさらに塩化物イオンが抜けることで、ジクロロメチレンが生成します。

他には、カルベンではないけどカルベンのような反応を起こせる化学種、カルベノイドというのがあります。

こちらのSimmons-Smith反応剤がその代表例です。

こちらは塩酸と硫酸銅によって活性化された亜鉛とジヨードメタンから作ることができます。

トランス-2-ブテンとの反応はこのとおりであり、メチレンを反応させたのと同じ生成物になります。

過酸を用いたエポキシ化

では続いてアルケンからオキサシクロプロパンを作る方法についてお話しします。

オキサシクロプロパンはエポキシドと言われてきたので、この反応はエポキシ化とも言います。

使うのは過酸、すなわち普通の酸より酸素が1個多いものです。

こちらのペルオキシカルボン酸がその例で、実は、水素原子の隣の酸素原子は正に分極しているため、求電子的になっています。

過酢酸でも反応は起こせますが、実験室で使われることが多いのは、こちらのm-クロロペルオキシ安息香酸、略してMCPBAというものです。

そして、もっと工業的に大規模でこの反応を起こす場合は、もうちょっと安定な反応剤を使います。

モノペルオキシフタル酸マグネシウム、略してMMPPというもので、通常は六水和物として売られています。

実際のトランス-2-ブテンとMCPBAの反応は、↓のとおりで、立体は保持されます。

こちらが電子の動きで、求電子的な酸素原子へπ結合の電子が移っています。

そして、アルケンに2つ以上の二重結合があった場合、1当量のMCPBAを加えると、置換がより多い方の二重結合がエポキシ化されたものが選択的に得られます

超共役により、多置換であるほど二重結合周辺の電子密度が大きくなっているためです。

隣接ジオールの合成

アンチ付加体

それでオキサシクロプロパンは反応性が高いため、続けて開環反応を起こすことができます。

特に酸性水溶液で処理した場合は、このように2つヒドロキシ基が隣接したジオールが得られます。

水の求核攻撃はSN2で進行するため、この反応は立体特異的であり、反応全体ではアンチ付加になります。

シン付加体

それで、2つのヒドロキシ基をシン付加させる方法もあります。

使うのは、四酸化オスミウムOsO4です。

この反応は酸化還元反応であり、オスミウムは8価から6価へ還元されます。

この生成物を硫化水素や亜硫酸水素ナトリウムで還元的に分解することで、隣接シンジオールとなります。

ただし、オスミウム反応剤は高価かつ毒性も非常に高いため、扱いは難しいです。

そのため、過酸化水素などによる再酸化で、触媒量に抑えるなどの工夫が必要となります。

また、四酸化オスミウム以外でも、過マンガン酸カリウムで隣接シンジオールを作れることが知られています。

ただし、こっちは過剰酸化が起こるため収率が低いです。

じゃあ、なぜ紹介したのかという話ですが、この反応はアルケンの存在を確認するテストに使えます。

暗紫色の過マンガン酸カリウムが消費されると、溶液の色が透明に近くなり、同時に褐色沈殿として、二酸化マンガンが生成します。

オゾン分解

それでは次、オゾン分解という反応の話に移ります。

オゾン層でよく知られるオゾンは青色で生臭い匂いのする気体です。

実験室レベルでは、アーク放電により一部の酸素分子からオゾンが作られます。

このようにして作ったオゾンと酸素の混合気体をアルケンのメタノールまたはジクロロメタン溶液と反応させます。

これを硫化水素、または亜鉛と酢酸により還元すると、アルケンの二重結合だった部分がσ結合もろとも解離して、2つのカルボニルになります。

反応機構はこのとおりです。

まず、π結合の電子がオゾンに供与されると同時に、オゾンからも電子対がアルケン側へ移り、上段真ん中の中間体となります。

これはモルオゾニドというもので、一次オゾニドまたは初期オゾニドとも呼ばれます。

ただし、これはO-O結合が2つもあるため安定でなく、さらに構造の組み換えが起こります。

そうしてできるのが、下段真ん中のオゾニドというものです。

これに還元剤である硫化水素または亜鉛と酢酸を加えると、酸素原子が1個外れて、2つのカルボニルが生成します。

この反応は、炭素同士のπ結合だけでなく、σ結合も切るのが特徴的な点で、炭素数を減らすのに有用な反応です。

ラジカル付加反応

続いて紹介するのはラジカル付加反応です。

まずおさらいとして、アルケンに臭化水素が求電子付加する場合は、位置選択性はMarkovnikov則に従い、置換がより多い炭素側へ臭素が付きます。

しかし、何も考えないでこの反応をやろうとすると、こんなふうに逆Markovnikov則に従った生成物がたくさんできてしまうことがあります。

その原因は過酸化物の存在にあります。

アルケンは空気中に放置すると酸化して、一部が過酸化物となってしまうのですが、精製してこれを取り除かないと、ラジカル的な反応が起こってしまいます。

その結果、逆Markovnikov則に従った生成物ができてしまうというわけです。

反応機構はこのとおりで、開始段階では過酸化物がホモリシス開裂し、それから臭素原子ができます。

そして、臭素原子は安定なラジカルができるようにアルケンと結合を作るため、置換のより少ない炭素側に付きます。

このようにしてできた第二級ないし第三級ラジカルは臭化水素から水素原子を引き抜き、また臭素原子を発生させるというサイクルで、反応は伝播していきます。

ラジカル同士が出会って消滅する停止反応が起こるまで、このサイクルを繰り返します。

ここで注意したいのは、塩化水素やヨウ化水素では、このラジカル付加反応は起こらないということです。

どちらも熱力学的に不利なため、空気中に放置したアルケンと反応させても、Markovnikov則に従った生成物のみが得られます。

また、意図的にラジカル付加反応を起こしたい場合は、あらかじめ過酸化物やアゾ化合物を入れておくということもあります。

代表的なラジカル開始剤としては、こちらにあるような化合物です。

あとは、アゾビスイソブチロニトリル、略してAIBNというものも有名です。

そして、このようなラジカル付加反応は、臭化水素の他にチオールでも起こりますので、これも知っておいてください。

高分子の合成(重合反応)

それで、アルケンは高分子の材料になります。

活性な末端に次々とアルケンが結合していき、二量体、オリゴマー、そしてポリマーとなります。

相当なボリュームになりますので、また高分子の記事でお話します。

エチレンの工業的な利用例

それで最後、あまり試験で聞かれないかなとも思いますが、エチレンは工業的にこんなふうに使われてるよというのを軽く見ておきます。

エチレンは石油を原料として得ることができますが、そこからWacker法によりアセトアルデヒドを作ることができます。

反応に用いるのは、水と酸素、そして触媒である塩化パラジウム(II)と塩化銅(II)で、水素原子1つをヒドロキシ基に置換し、ケト-エノール平衡によりアルデヒドができるという反応です。

またエチレンに塩素分子をアンチ付加させたのち、熱をかけると塩化水素を取り出せて、クロロエチレンを得ることができます。

そして、エチレンに銀触媒とともに酸素を反応させることでも、オキサシクロプロパンを作ることができ、これを酸で処理することでエチレングリコールを作ることができます。

エンジンの不凍液として知られていますが、ポリエチレングリコール(PEG)の原料としても重要な化合物です。

練習問題

それでは最後に練習問題をやってみましょう!

A. 3-メチル-1-ペンテンに対して、上記の求電子水和反応剤3種類を反応させると、どのような生成物が得られる?

B. 左の化合物から右の化合物を合成するまでの経路は?(立体は考慮しません。)

答え
A.

まず①、低温条件で希硫酸を反応させると、Markovnikov則に従って3-メチル-1-ペンタノールが得られます。

また、カルボカチオンの転位を伴って、3-メチル-3-ペンタノールも生成すると考えられます。

②オキシ水銀化-脱水銀化では、カルボカチオン中間体を経由しないため、転位が起こりません。

したがって、Markovnikov則に従った3-メチル-1-ペンタノールが高い収率で得られます。

③ヒドロホウ素化-酸化では、逆Markovnikov則に従って、3-メチル-1-ペンタノールが得られます。

B. 今回は、これまでの動画でやってきた反応だけで考えた例を示します。

それでは、逆合成解析のプロセスで、生成物から辿っていきます。

まず、原料と最終生成物では炭素数が異なるため、オゾン分解によって数を合わせることを考えることにします。

そして、二重結合ができる前は、こんな中間体が考えられます。

ただし、この第三級アルコールに濃硫酸を加えても末端アルケンの選択性は低いので、ちょっと注意が必要です。

環状構造は、オキサシクロプロパンへアルコキシドの分子内SN2反応を起こさせることで作れるので、今回はそう考えます。

そして、まだ炭素数は足りていないので、もう一度オゾン分解することを考えると、この前の構造はアルデヒドになります。

あとは、オキサシクロプロパンが二重結合になれば、原料の化合物になります。

これをひっくり返すと、このようになります。

まず過酸による位置選択的なエポキシ化から、オゾン分解をします。

それから、水素化ホウ素ナトリウムによるヒドリド還元でアルデヒドをアルコールに変換します。

このとき、水素化アルミニウムリチウムを使うと、オキサシクロプロパン環も開いてしまうので、注意してください。

それから、嵩高い強塩基により求核攻撃を防ぎつつ、アルコキシドを作りまして、オキサシクロペンタン環を作ります。

そして、先程も言いましたが、ヒドロキシ基のままだと末端アルケンを選択的に得られないので、三臭化リンにより、ヒドロキシ基をブロモ基に変換して、嵩高い強塩基によりE2反応させます。

あとは、これをオゾン分解すれば、目的の生成物になります。

僕自身が合成専門ではないので、もっと良い方法があるかもしれません。

その場合は教えていただけると助かります(;・∀・)

まとめ

はい、今回の内容は以上です。

間違いの指摘、リクエスト、質問等あれば、Twitter(https://twitter.com/bakeneko_chem)かお問い合わせフォームよりコメントしてくださると、助かります。

それではどうもありがとうございました!

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