【大学の高分子科学】高分子モデルの自由回転鎖、束縛回転鎖について、わかりやすく解説!

この記事は約5分で読めます。

こんにちは!それでは今回も化学のお話やっていきます。

今回のテーマはこちら!

高分子鎖モデルである自由回転鎖と束縛回転鎖について考えよう!

動画はこちら↓

動画で使ったシートはこちら(freely rotating chain)

それでは内容に入っていきます!

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自由連結鎖の問題点

まず、以前紹介した自由連結鎖という最も単純な高分子モデルについて軽くおさらいをやります。

詳しくはこちらの記事で話しています。

【大学の高分子科学】高分子の広がりを表す両末端間距離と回転半径とは?自由連結鎖についても、わかりやすく解説!
高分子はその長さゆえに溶液中で折り畳まって球のようになることがあります。どれくらいの大きさに広がっているのかということは濃度と溶液特性を結びつける重要な情報になります。この記事では高分子の分子の広がりをどのように評価するのかということを丁寧に解説しています。ぜひ読んでみてください!

自由連結鎖は結合長が一定で結合角がランダムという条件でモノマーをつないだモデルです。

平均二乗両末端間距離および回転半径を計算するのが簡単で扱いやすいモデルなんですが、例えば\(\rm{sp}\)\(^3\)炭素なら\(109.5^\circ\)という結合角を取りやすいなどといったことが全く考慮されていません。

そのため、実際の高分子を表現するにはもっと条件が必要になってくる場合が多いです。

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自由回転鎖

そこで次に出てくるのが自由回転鎖というモデルです。

これは結合長を\(b\)、結合角を\(\theta\)と両方一定となることを考えたモデルです。

両方固定しても内部回転角\(\phi\)はランダムな値をとるため、両末端間距離および回転半径が1つの値に定まることはありません。

この時、結合ベクトル\(r_i\)と\(r_j\)の積について、ランダムな内部回転角をとったときの平均をとると\(b^2\cos^{|j-i|}{(\pi-\theta)}\)となります。

したがって平均二乗両末端間距離は、以下のように計算されます。

\(i\)と\(j\)が同じ場合と異なる場合で2項に分けて、第一項は自由連結鎖同様に\(nb^2\)となります。

第二項は等比数列の和として計算できます。

そして、結合角\(\theta\)は一般的に\(0\)から\(\pi\)までの間の値をとるため、\(\cos^n(\pi-\theta)\)は\(1\)より十分に小さくなり、無視できると考えることができます。

最後に加法定理より\(\cos{(\pi-\theta)}=-\cos{\theta}\)となるので整理します。

すると最終的に自由回転鎖の平均二乗両末端距離は自由連結鎖の値である\(nb^2\)に\(\frac{1-\cos{\theta}}{1+\cos{\theta}}\)をかけた値になります。

またこの式をモノマー間ベクトル\(R_{ij}\)に当てはめてLagrangeの定理より平均二乗回転半径を計算するとこうなります。

\(\frac{1-\cos{\theta}}{1+\cos{\theta}}\)の部分には\(i\)も\(j\)も入っていないので、自由連結鎖同様に\(<S^2>=\frac{1}{6}<R^2>\)という関係になります。

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束縛回転鎖

自由回転鎖の話はここまでで、もう1つのモデルも紹介したいと思います。

先ほどは結合角を一定にして内部回転角をランダムとしましたが、有機化学でNewman投影式で安定な配座を表すときには手前側と奥側の置換基が重ならないような形を書くように、現実には配座のとり方はランダムではありません。

最もエネルギーが低い配座をとる確率が高くなります。

そこで内部回転角がどの値になるかという確率は内部回転ポテンシャルに従って決まるというモデルを考えます。

これが束縛回転鎖です。

図はポリエチレンを例にしていますが、この場合、主鎖原子がトランスの配座となるのが最もエネルギーが低く、次いで2つのゴーシュの配座が安定になります。

ゴーシュの配座は区別のため、ゴーシュ(+)、ゴーシュ(-)といわれることもあります。

そして、平均二乗両末端間距離はさっきと似た形で、こうなります。

ここで、\(<\cos{\phi}>\)は\(\cos{\phi}\)の平均値です。

そしてここからは簡単のため、内部回転角\(\phi\)は\(60^\circ\)、\(180^\circ\)、\(300^\circ\)のみを値としてとることにします。

つまりはトランスと2つのゴーシュ以外の配座は考えないようにするということで、このモデルは回転異性体近似モデルといいます。

ゴーシュとトランスのエネルギー差を\(\Delta E\)とすると、ボルツマン分布より、この関係が成り立ちます。

\(\phi\)が\(60^\circ\)になる確率を\(P(\phi)\)とすると、それはカノニカル分布の形で表されます。

したがって、\(<\cos{\phi}>\)はこうなります。

これを平均二乗両末端間距離の式に代入することで、このような関係が得られます。

この式は、\(\Delta E\)を\(0\)にすると、自由回転鎖の式と同じになります。

つまり、トランスと2つのゴーシュを等確率にした場合と、すべての内部回転角を等確率にした場合は同じ結果になるということです。

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まとめ

それでは今回の内容は以上ですので最後軽くおさらいをやって終わります。

今回は、自由回転鎖と束縛回転鎖についてお話ししました。

自由連結鎖では結合角がランダムになっており、\(\rm{sp}\)\(^3\)炭素が\(109.5^\circ\)をとりやすいことを考えると、実在の高分子を再現できるモデルとはいいがたいです。

そこで提案されたのが、今回お話しした2つのモデルで、自由回転鎖では結合角一定で内部回転角がランダム、束縛回転鎖では結合角が一定で内部回転角の存在確率が内部回転ポテンシャルに従うということを考えます。

これらの条件により、平均二乗両末端間距離と平均二乗回転半径が変化します。

最後に、これは少し高分子とは話が違いますが、全体の分子数に対しての割合はカノニカル分布で表せるということもぜひ押さえておいてください。

それではどうもありがとうございました!

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