【大学の有機化学】ハロアルカンの求核置換反応と脱離反応の競合について、わかりやすく解説!

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こんにちは!

今回のテーマはこちら!

ハロアルカンの求核置換反応と脱離反応でどの反応が優勢になるか、予測できるようになろう!

動画はこちら↓

動画で使用したシートはこちら(SN and E reaction)

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各反応のおさらい

この記事は、ハロアルカンを基質とした内容です。

ハロゲンの知識まとめの記事にて、こんがらがりやすいハロゲンの反応性の順序をまとめていますのでこちらも、合わせて確認しておくとよいと思います。

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それでは各反応のキーワードを抜粋して確認していきましょう。

二分子求核置換反応(\(\displaystyle \rm{S_N2}\)\(\)反応)

\(\displaystyle \rm{S_N2}\)\(\)反応は、求核攻撃と脱離が同時に起こる反応で、嵩高くない基質と優れた求核剤の組み合わせで有利な反応です。

また、この反応は立体特異的であり、基質が光学活性な場合、生成物はその鏡写しになったものが得られます。

この反転のことを、ワルデン反転といいます。

一分子求核置換反応(\(\displaystyle \rm{S_N1}\)\(\)反応)

求核攻撃の前に脱離基が脱離してしまうことで、中間体にカルボカチオンを経由します

反応は嵩高い塩基と求核性の小さい求核剤の組み合わせで起こります。

そしてカルボカチオンを経由することは生成物を複雑にします。

カルボカチオンは光学不活性な平面構造であるため、生成物の立体は保持されません

また、プロトンやメチル基の転位が起こる可能性があります。

一分子脱離反応(\(\displaystyle \rm{E1}\)\(\)反応)

\(\displaystyle \rm{S_N1}\)\(\)反応の副反応となる反応です。

脱離反応では、脱離基とプロトンが基質から抜けることでアルケンが生成します。

\(\displaystyle \rm{E1}\)\(\)反応は、まず脱離基が脱離してカルボカチオンとなったところに、塩基が近づいてきてプロトンを引き抜きます。

この反応は嵩高い基質と弱塩基の間で起こります。

カルボカチオンを経由するため、何種類もの生成物を与える場合があります。

二分子脱離反応(\(\displaystyle \rm{E2}\)\(\)反応)

塩基によってプロトンが引き抜かれることが引き金となって脱離基が脱離します。

この反応は嵩高い基質と強塩基の組み合わせで起こります。

脱離基と引き抜かれる水素原子は、脱離基とアンチの立体配座にあるものです。

脱離反応については、こちらの記事で詳しく書いています。

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見分けるのに便利な表

問題で練習するのが一番ですが、その前に便利な表があるので紹介しておきます。

これを覚えれば、求核置換反応と脱離反応をだいたい予測できるといって良いと思います。

ここで、3つ注意点があります。

嵩高くない基質と求核性の小さな求核剤の組み合わせでは、反応は進行しません

②メトキシドイオンのような立体障害が小さく塩基性が大きい求核剤では、同じ第一級ハロアルカンに対してでも、分枝があるかどうかで優勢となる反応が変わります

第二級ハロアルカンでは、4つすべての反応が起こりうるため、場合に応じて予測できるようにしてください。

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練習問題

それでは実際に、どの反応が優勢となるかを予想してみましょう。

ここに4つ反応式を書いてみました。

それぞれで優先的に起こる反応を予測し、その生成物も考えてください。

まず(1)は、第二級ハロアルカンと求核性も塩基性も小さい水の組み合わせです。

表によると、遅いながらも\(\displaystyle \rm{S_N1}\)\(\)と\(\displaystyle \rm{E1}\)\(\)反応が進行します。

よって、両方の光学異性体が得られるほか、下のようなアルケンも得られると考えられます。


続いて(2)は、第三級ハロアルカンと嵩高くない強塩基の組み合わせです。

表によると、\(\displaystyle \rm{E2}\)\(\)反応が進行するので、生成物はこれらのアルケンとなります。

どのアルケンが多いかはSaytzev則で予想され、、左上の末端アルケンを除く三置換アルケンとなります。


(3)は、ひっかけです。

分岐のある第一級ハロアルカンと求核性大きい弱塩基の組み合わせで、表によると\(\displaystyle \rm{S_N2}\)\(\)が起こるとあるのですが、反応は起こらないというのが正解です。

フッ化物イオンの脱離能は極めて低く、ほとんど脱離しません。

ハロゲンの中でもフッ素は特別なので、分子の中に\(\displaystyle \rm{F}\)\(\)という文字があったら疑ってかかるようにしてください。

そして、(4)は分岐のない第一級ハロアルカンとtert-ブトキシドイオンという嵩高い強塩基の組み合わせです。

表より\(\displaystyle \rm{E2}\)\(\)反応が優勢とわかるので、生成物はプロピレンとなります。

このように塩基が嵩高い場合は、基質の立体障害がそこまで大きくなくても、\(\displaystyle \rm{E2}\)\(\)反応が起こる可能性があるので、注意しましょう。

まとめ

はい、今回の内容は以上です。

間違いの指摘、リクエスト、質問等あれば、Twitter(https://twitter.com/bakeneko_chem)かお問い合わせフォームよりコメントしてくださると、助かります。

それではどうもありがとうございました!

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