【大学の有機化学】チオールとスルフィドの反応をわかりやすく解説!!

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こんにちは!

今回も化学のお話やっていきます。

今回のテーマはこちら!

チオールとスルフィドの反応を見てみよう!

動画はこちら↓

動画で使ったシートはこちら(thiol sulfide reaction)

チオール、スルフィドの命名法と物性については、こちらの記事をご覧ください。

【大学の有機化学】アルコールとエーテルの硫黄類縁体(チオールとスルフィド)の命名法と物性
酸素と硫黄は同じ第16族の元素であり、似たような結合様式を解くことができます。では、アルコールやエーテルの酸素原子が硫黄になった場合はどうなるのか、本記事では特に命名法と物性について考えていきます!

ではまいりましょう!

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チオールの合成法

まず、チオールは硫化水素イオンをハロアルカンに求核攻撃させることで得られます。

ただし、硫化水素イオンを過剰量加える必要があります

もし等量を反応させた場合は、生成物がさらに反応を起こしてしまう可能性があるためです。

生成したチオールは酸解離してRS、つまりチオラートになって、これはアルコキシドより優れた求核剤であるので、SN2反応が起こってしまいます。

硫化水素イオンが過剰量あれば、チオラートとハロアルカンが出会う可能性が小さいので、チオールを多く得られるということになります。

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スルフィドの合成法

それで、このチオラートとハロアルカンの反応こそが、次に紹介するスルフィドの合成法になります。

スルフィドはチオールとハロアルカンに水酸化ナトリウムなどの強塩基を加えることで合成できます。

この反応はエーテルのWilliamson合成法と全く同じ形です。

Williamsonエーテル合成法についてはこちらをご覧ください。

【大学の有機化学】ウィリアムソンエーテル合成法の特徴をわかりやすく解説!!
この記事では代表的なエーテル合成法であるWilliamsonエーテル合成法についてその特徴をまとめました。分子内反応による環状エーテル生成のプロセスも詳細に書いてますので、ぜひ読んでいってください!

チオラートは弱い塩基ですので、脱離の副反応はほとんど起こらず、SN2反応がきれいに進行します。

水酸化物イオンの求核攻撃との競合もほとんどなくスルフィドだけが生成します。

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求核剤、脱離基としてのスルフィド

では続いて、こうやってできるスルフィドは分子全体で電気的に中性でありながら、そこそこの求核剤として振る舞うので、それを紹介します。

例えば、ジメチルスルフィドはヨウ化メタンにSN2反応を起こして、下のようなカチオンになります。

このイオンのことはスルホニウムイオンといいます。

スルフィドはまた優れた脱離基としての一面も持つため、例えば水酸化物イオンをスルホニウムイオンに求核攻撃させてアルコールを得ることができます。

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硫黄類縁体ならではの反応

そして、今回の本題、最後は硫黄類縁体ならではの反応を見ていこうと思います。

酸素原子にはできなくて硫黄原子にはできることといえば、オクテット則に従わずに10個や12個の最外殻電子を持った形も存在できることです。

チオールの酸化

例えばチオールを酸化させると酸素原子を3個も受け入れてスルホン酸となります。この時硫黄原子の最外殻電子数は12個になっています。

余談ですが、この反応は有用で、反応性に富む塩化スルホニル、さらにはスルホン酸エステルの合成につなげることができます。

チオールの還元

そして、先ほどは酸化でしたが、ヨウ素分子などにより還元させるとこのようにS-S結合を持つジスルフィドができます。

このジスルフィド結合は酸化還元で取って付けてができるということから生体内でもよく使われ、たんぱく質の特異的な立体構造を固定するために使われています。

この原理を利用したのが髪の毛のパーマで、酸化させた後で、髪をくしゃくしゃにして還元すれば髪の毛にクセをつけることができます。

スルフィドの酸化

それで今日紹介する最後の反応はスルフィドの酸化です。

スルフィドに過酸化水素水を反応させると、酸素原子を2つ受け取ってスルホンになります。

この反応はまた、酸素原子を1つだけ受け取ったスルホキシドを中間体として経由しています。

練習問題

はい、今回の本題は以上なので恒例の練習問題と行きます。

こちらの2つの反応で主生成物となるものは何でしょうという問題です。

答え
(1)ではまず硫化物イオンS2-がSN2反応を起こしてこのような形になったのちに、分子内でもう一度SN2反応を起こすことで環状スルフィドが生成します。

(2)はオキサシクロプロパンの開環反応であり、硫化水素イオンは嵩高くない方の左側の炭素原子にSN2機構で攻撃します。

結果、立体も保持したままこちらのメルカプトアルコールになります。

まとめ

はい、それでは最後のおさらいに入ります。

今回はチオールとスルフィドの反応について見ていきました。

チオールはハロアルカンに過剰量の硫化水素イオンを加えることで得られます。

過剰量入れるのは対称スルフィドができることを防ぐためです。

スルフィドはWilliamsonエーテル合成法と同じ要領で、チオールとハロアルカンに水酸化ナトリウムなど強塩基を加えることで合成できます。

チオールからプロトンが外れてできるチオラートはアルコキシドより求核性が高く塩基性が低いため、アルコキシドとの競合はほとんど起こらず、脱離反応もあまり起こりません。

このスルフィドは電気的に中性でありながら求核剤、脱離基として振る舞うということも覚えておいてください。

そして、最後のトピックとして硫黄類縁体ならではの反応を見ていきました。

硫黄は、オクテット則に従わない構造をとることができるので、チオールの酸化では酸素原子を3個受け取ってスルホン酸になることができます。

スルフィドの酸化でも酸素原子を2個受け取ってスルホンになります。

また、チオールの還元では分子間でジスルフィド結合を作ります。

この結合は酸化によってまた解離するという便利さから生体内でも多く使われている結合で、タンパク質の特異的な立体構造を固定化することができます。

また、これを人工的に利用したのが髪の毛のパーマということになります。

それでは、どうもありがとうございました!

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