【大学の物理化学】量子の不確定性と確率波、一次元井戸型ポテンシャルに拘束された電子の分布について、わかりやすく解説!

この記事は約7分で読めます。

こんにちはー!

今回も化学のお話やっていきます。

今日のテーマはこちら!

量子がもつ不確定性と確率波の考え方を理解して、実際に電子が持つエネルギーをシュレディンガー方程式で計算してみよう!

動画はこちら↓

動画で使ったシートはこちら(well potential)

じゃあ、さっそく内容に入っていきましょう!

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量子の不確定性と確率波

以前、シュレディンガー方程式の導出を行った記事でも触れた、電子の二重スリット実験の話をします。

電子は波の性質を持っていることで、自身と干渉した後、スクリーンのどこかに粒子として衝突します。

その後も電子を1個ずつ打ち出していくと、スクリーン上には干渉縞が見えてきます。

波として考えれば、干渉縞を作るのはごく自然なことですが、粒子として考えるならば、毎回同じように飛び出した電子が各々別の位置に到達するという訳の分からないことが起こっています。

このように1個1個の運動を完全に予測できないというのが量子の不確定性という性質です。

電子の位置と運動量を同時に決めることができなくて、電子は雲のように空間に分布しているものであると考えます。

では電子の運動を理解することはできないのか?

もう一度、スリット実験を思い出してみましょう。

するとただ1つ確実に言えることがあります。

それは高次の明線ほど、電子は到達しにくく、低次の明線に到達する確率が高いという事です。

このことより、ある地点には何%の確率で存在しているという事は言えそうだという事になります。

そこで、確率を表す波の関数で量子の運動を議論しようという風になりました。

確率を表す波のことは確率波と呼びます。

シュレディンガー方程式で扱う波動関数\(\varphi\)は複素数ですが、存在確率は\(0\)から\(1\)までの実数になるはずです。

シュレディンガー方程式から電子の存在確率を計算することができるように、\(\varphi\)の大きさの二乗が存在確率にあたるというモデル設定をすることにします。

すると、例えば一次元で\(x_1\)から\(x_2\)までの範囲に電子が存在する確率は次のように表すことができます。

確率は0から1までの値になるはずなので、規格化するためにこの値で割っています。

グラフで表すと、斜線部の面積が電子の存在確率になります。

この確率波の考え方は、提唱された当時、あのアインシュタインにも認められず、なんとシュレディンガーさえも反対派でした。

しかし、実際の現象との整合性が多く確かめられる結果となり、今では受け入れられています。

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一次元井戸型ポテンシャル

ではこのようにして設定された波動関数を使って、実際に電子のエネルギーを求めてみましょう。

最も計算が簡単な系は今回紹介する一次元井戸型ポテンシャルモデルです。

ある一次元の領域\((0,a)\)の区間に電子が1個存在していたとします。

この区間のポテンシャルエネルギーは\(0\)とします。

また、ここ以外の領域には電子が絶対に存在しないという意味で、ポテンシャルエネルギーを\(\infty\)とします。

\(x=0, a\)の地点も電子が存在していないので、\(\varphi (0)=\varphi (a)=0\)になります(境界条件)。

また、\((0,a)\)の範囲に必ず電子があるので、存在確率\(|\varphi (x)|^2\)の定積分が\(1\)になるという条件をあらかじめ立てておきます(規格化条件)。

\((0, a)\)までの範囲におけるシュレディンガー方程式はポテンシャルが\(0\)なのでこんな形になります。

これは単純な微分方程式であり、特性方程式はこのようになります。

さらにエネルギー\(E\)と運動量\(p\)は\(E=\frac{p^2}{2m}\)の関係になるので、\(\lambda=\pm \frac{p\rm{i}}{\hbar}\)となります。

したがって、波動関数はこのようになります。

次にオイラーの公式を使ってこの波動関数を変形すると、この形になります。

ここで\(\varphi (0)=0\)という境界条件があったので、それを当てはめると\(C_1+C_2=0\)となるので、\(\varphi (x)\)はこのように\(\sin\)だけで表せるという事になります。

また、\(\varphi (a)=0\)であることから、\(\frac{p}{\hbar}=\frac{n\pi}{a}\)となります。

ただし、\(n\)は自然数です。

続いて、係数部分\(\rm{i}(C_1-C_2)\)を\(A\)という複素数で表すことにして、規格化条件よりこの係数を求めてみます。

すると、\(\frac{aA^2}{2}=1\)という式が出てきます。

\(A\)はこの条件を満たす複素数であれば何でもいいので、ここでは最も単純な\(\sqrt{\frac{2}{a}}\)としておきます。

すると波動関数はこんな形で求めることができました。

最後に電子が持つエネルギーを求めてみます。

この計算はかなり簡単で、こんな風に計算できます。

ここで注目してもらいたいことは、量子のエネルギーが不連続な値となるという事です。

縦軸をエネルギーとして図で表すと下のようにになって、このエネルギー順位の間のエネルギーをもつ電子は存在していないという事になります。

量子のエネルギーはとびとびの値を持つという性質があるので、ここでぜひ知っておいてください。

なかなか受け入れにくいかもしれませんが、実は僕らが普段目にしている物にがついているのは、量子のエネルギーが不連続だからです。

詳しくはこちらで解説しています。

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練習問題

さて、今回の本題は終わったので、最後練習問題をやって終わろうと思います。

さっきは\((0, a)\)という範囲でしたが、今度は\((-d, d)\)という範囲に拘束された電子の波動関数とエネルギーを求めてくださいという問題です。

先ほどと座標が少しずれただけなので、もちろんエネルギーは一致するはずです。

答え

まず境界条件は\(\varphi (-d)\)と\(\varphi (d)\)が\(0\)になるというものですので、このような式が得られます。

\(A\)と\(B\)が両方\(0\)になればこの式は満たされますが、規格化条件を満たすことができません。

したがって、\(A\)と\(B\)の片方だけが\(0\)として、\(\cos(\frac{pd}{\hbar})\)と\(\sin(\frac{pd}{\hbar})\)のうち、\(0\)ではない係数を持つ方が\(0\)になるという事を考えます。

何を言っているかわからないと思いますが、例えば\(B\)を\(0\)と仮定しましょう。

その時境界条件を満たすためには\(\cos(\frac{pd}{\hbar})\)が\(0\)である必要があります。

よって、\(n\)を正の奇数として\(\varphi (x)\)は\(A\cos(\frac{n\pi x}{2d})\)となります。

\(A\)が\(0\)のときの\(\varphi (x)\)は\(n\)を正の偶数として\(\sin\)で書けるという事になります。

規格化すると、\(0\)でないときの\(A\)と\(B\)は\(\sqrt{\frac{1}{a}}\)という風になります。

よって、\(\varphi (x)\)はこのように\(\sin\)または\(\cos\)という形で表せることになります。

最後にエネルギーを求めると、\(\frac{\hbar ^2n^2\pi ^2}{8md^2}\)となって、\(\varphi (x)\)が\(\sin\)か\(\cos\)かは関係なくなりました。

仮に\(d=\frac{a}{2}\)とすると、先ほど求めた\((0, a)\)の領域の時とエネルギーが等しくなります。

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まとめ

おさらいをしておくと、まず量子には不確定性という性質がありました。

これは位置と運動量を同時に決めることができないというものです。

そのため、電子の運動を速さや加速度で議論することはできないんですけど、この地点に何%の確率で電子が存在しているぞという存在確率だけは法則がありそうだったので、確率波という概念が生まれまして、実際の現象との整合性もある程度確かめられています。

この動画では\(|\varphi (x)|^2\)が電子の存在確率になるとして実際に井戸型ポテンシャル内に拘束された電子の波動関数とエネルギーを計算してみました。

境界条件や規格化条件の考え方はこれから何度も出てくるので、しっかり理解しておいてください。

井戸型ポテンシャルの計算で分かった最も重要なことはエネルギーが不連続の値になることです。

この性質により、身の回りの現象や多くの化学反応の機構が理解されることになりました。

ぜひ覚えておいてください。

今回の内容は以上です。どうもありがとうございました!

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