こんにちは!
行列、ヤコビアンとやってきまして、ひと通り準備は完了しましたので、今回から量子化学の話に戻っていきたいと思います。
今回のテーマはこちら!
動画はこちら↓
動画で使ったシートはこちら(hydrogen calculus of variations)
では参ります!
変分法の流れ
まず、変分法とはどんなものかというと、そもそもはシュレディンガー方程式が厳密に解けない多体問題を扱うためのテクニックの1つです。
始めに、解として得られる波動関数の大まかな形を予想して、未知数を含む形の関数を作ります。
この関数のことは試行関数と言います。
そして次にこの試行関数を未知数を含んだままの形でシュレディンガー方程式に入れてエネルギーを求めます。
しかし、このエネルギーにも未知数が残っているので、最後にその未知数を消してあげます。
自然界は低いエネルギー状態を取るはずなので、エネルギーが極小となるような未知数を代入することで、波動関数とエネルギーが求められます。
水素原子の基底状態
言葉で言ってても仕方ないので、実際にやってみましょう。
今回は水素原子の基底状態を考えていきます。
水素原子のシュレディンガー方程式は簡単な近似だけで解けるんですけど、あえてこれに変分法を使うことで、答えの確かめを行っていきます。
計算方法
基底状態でのハミルトニアンはこうなります。
極座標で書いていますが、角度依存性がないので、変数は\(r\)だけになってます。
そして、いちばん重要な試行関数ですが、長距離側の極限を考えるとエクスポネンシャル型の減衰関数であることが予想できるので、このようにおいてあげます。
\(N\)が規格化定数で\(\alpha\)が未知数です。
この予測については水素原子についてシュレディンガー方程式を解いた記事が参考になります。
こちらもぜひご覧ください。

それで、試行関数を作ったらこれをまず、シュレディンガー方程式に入れてみます。
この式の両辺に\(\phi\)*を左からかけて全空間で積分し、整理するとエネルギーがこの形で求められることがわかります。
この式は別の表現をされることもあるので知っておいてください。これはブラケットでの表示と言います。
シュレディンガー方程式の意味についてはこちらで解説しています。

では、実際にエネルギーを出してみましょう。
規格化
まず規格化して、分母が\(1\)になるようにします。
ヤコビアンも入れて計算していくと、\(N\)は\(\sqrt{\frac{a^3}{\pi}}\)になりました。
ヤコビアンについてはこちらをご覧ください。

エネルギー
じゃあ、今度分子の部分を見ていきます。
すると結局エネルギーは未知数\(\alpha\)を含む形でこんなふうに求められました。
エネルギーの極小
それで最後に、安定な部分、すなわちエネルギーが極小を取る部分を探してあげます。
極小では\(\alpha\)での微分が\(0\)になります。
これを変形することで未知数\(\alpha\)が求まりました。
この\(\alpha\)を試行関数とエネルギーの式に入れてあげると、それらを値として求めることができます。
エネルギーはこのような式になり、結果として\(-\frac{mk^2e^4}{\hbar}\)となりました。
シュレディンガー方程式、ボーアのモデルとの比較
この出てきたエネルギーをシュレディンガー方程式から頑張って解いたエネルギーと比較してみると、ボーア半径が\(\frac{\hbar^2}{mke^2}\)で与えられることから、変形により、たしかに変分法で求めたものと同じ値になっていることがわかりました。
水銀原子の軌道計算についてはこちらをご覧ください。

まとめ
それでは今回練習問題はありませんので、軽くおさらいをやって終わります。
今回は、変分法を使って水素原子の基底状態について考えてみました。
変分法ではまず未知数を含む試行関数からエネルギーを求めた後に、エネルギーを未知数で微分して極小値を求めます。
水素原子の基底状態について考える場合には、角度依存性がないハミルトニアンと指数関数型の試行関数を使うと、うまく計算することができて、シュレディンガー方程式、あるいはボーアの原子モデルから求めたエネルギーと同じ値を得ることができました。
変分法の考え方はこれから何回も出てくると思いますので、そちらもまた見ていただければと思います。
それではどうもありがとうございました!
物理化学のおすすめ書籍を知りたい方は、あわせてこちらの記事もチェックしてみてください。

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