こんにちは!
今回も行列の話の続きやっていきます。
今日のテーマはこちら!
単位行列については行列の第一弾の記事でちらっと触れましたが、まだ掛け算の話をしていなかったので、改めて説明していきます。
動画はこちら↓
動画で使ったシートはこちら(inverse matrix)
それでは内容に入っていきます。
単位行列
まず、単位行列についてお話しします。
単位行列は正方行列の1つであり、主対角線上の成分が全て\(1\)でそれ以外の成分が全て\bm{0}の行列を指します。
単位行列とある\(n\)次正方行列の掛け算にはこのような関係が成り立っています。
単位行列をかけても、元の行列と同じものになります。
また、かける順番を交換してもこの関係は成り立ちます。
一般的に行列の掛け算は交換できないので、これは特殊な例になります。
転置行列
そして、続いて紹介するのは転置行列です。
これはある行列\(\bf{\rm{A}}\)があった時にその\((i,j)\)成分が\((j,i)\)成分になるように成分を並べ替えた行列になります。
そして\(\bf{\rm{A}}\)の転置行列は\(\bf{\rm{A}}\)の左上に小文字の\(t\)をつけて\(^t\bf{\rm{A}}\)というように表します。
また、大文字の\(T\)を右上に書く表記など、そのほかにもいくつか表記の仕方が知っておいてください。
その例として例えばこの行列の転置行列はこのようになります。
行と列の数が入れ替わっているので横に長い行列の転置行列は、縦長の行列になります。
転置の演算
そして、この転置を取る操作には次のような法則があるので知っておいてください。
まず、\(\bf{\rm{A}}+\bf{\rm{B}}\)をまとめて転置を取ったものは、それぞれの転置行列の和と等しくなります。
そして\(\bf{\rm{AB}}\)という行列の積に対して転置を取った場合には、行列の順番が入れ替わりまして\(^t\bf{\rm{B}}\)\(^t\bf{\rm{A}}\)と言う形になります。
逆行列
では最後、逆行列というものについて紹介します。
これはある行列\(\bf{\rm{A}}\)に書けるとその積が単位行列になる行列のことで、\(\bf{\rm{A}}^{-1}\)という表記の仕方をして「エーインバース」などと呼びます。
スカラーで言うところの逆数のようなものだと考えて頂ければ結構です。
そして、例えば\(\bf{\rm{B}}\)が\(\bf{\rm{A}}\)の逆行列であった場合はかける順番を交換することができて、さらにその積が単位行列になります。
交換が可能であることの証明
先ほども言いましたが、このような交換は一般的には成り立ちません。
逆行列との交換が可能であることを証明するためにはこのような変形を考えます。
まず、逆行列\(\bf{\rm{B}}\)との積が単位行列になるという式の両辺に左から\(\bf{\rm{B}}\)をかけます。
すると右辺は\(\bf{\rm{B}}\)になるんですけど、左辺を見てみると\((\bf{\rm{BA}})\bf{\rm{B}}\)とみなすことができ、それがまた\(\bf{\rm{B}}\)になるという事なので、結局\(\bf{\rm{BA}}\)も単位行列であるという事になります。
また、この証明には別の方法もあって、\(\bf{\rm{AB}}\)は単位行列ですが、単位行列は\(1\)のようなものなので、単位行列×単位行列という風に考えることもできます。
つまり、\(\bf{\rm{AB}}\)は\(\bf{\rm{AB}}\)\((\bf{\rm{AB}})\)になります。
そしてこの関係により、真ん中の\(\bf{\rm{BA}}\)が単位行列であることが分かります。
逆行列の求め方
はい、それでは今度逆行列を求め方についてお話しします。
まず、何度も出てきている\(\bf{\rm{AA}}^{-1}=\bf{\rm{E}}_n\)という式の両辺に\(\bf{\rm{A}}^{-1}\)をかけるとこの形になります。
ここで四角で囲ったこの2つの式を見てほしいんですけど、どちらも未知の行列\(\bf{\rm{A}}^{-1}\)に何らかの行列を左からかけて、別の行列になりましたという式になっています。
この形は前回やった連立方程式の解き方で、未知の縦ベクトルだった部分が未知の行列になった形だとみることができます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
つまりは逆行列も連立方程式同様に簡約化によって求めることができるようになります。
実際のやり方は\(\bf{\rm{A}}\)と単位行列を繋げたこの行列を簡約化して左側が単位行列となった時に右側に残る行列こそが\(\bf{\rm{A}}^{-1}\)になります。
そして、仮に\(\bf{\rm{A}}\)のランクがその次数より小さい場合にはこの操作ができず、逆行列は存在しないことになります。
最もわかりやすい例でいうと零行列がそうなのですが、すべての行列に逆行列が存在しているわけではないので、覚えておいてください。
練習問題
では最後、練習問題として以下の行列の逆行列を求めてみましょう。
そしてこれを簡約化すると右側の行列はこんな行列になりました。
本当にこれが逆行列になっているのか実際に確かめてみると、実際に積として単位行列が得られます。
実は2次正方行列の逆行列はこんな式で得られるという事が知られています。
簡約化の手間が省けるので、2次のときくらいは覚えておくのが良いと思います。
ちなみに、分母に\(ad-bc\)とありますが、ここが\(0\)になる場合には行列式が定義できないということになります。
まとめ
それでは今回の内容は以上ですので最後練習問題をやって終わります。
今回は単位行列、転置行列、逆行列についてお話ししました。
単位行列は対角成分が全て\(1\)、それ以外が\(0\)となる正方行列のことで単位行列とある行列の積はその行列と等しくなります。
転置行列はある行列の\((i,j)\)成分と\((j,i)\)成分を入れ替えた行列のことを言います。
特に重要なのは演算の法則で、\(\bf{\rm{AB}}\)という行列の積について転置を取ると\(^t\bf{\rm{B}}\)\(^t\bf{\rm{A}}\)となります。
最後は逆行列を紹介しました。
逆行列とは行列にとっての逆数のようなもので、積を取った時に単位行列になる行列のことを言います。
\(\bf{\rm{B}}\)を\(\bf{\rm{A}}\)の逆行列としたとき\(\bf{\rm{AB}}=\bf{\rm{BA}}\)という交換が成り立ちます。
この逆行列を求める際には元の行列と単位行列を引っ付けた行列を簡約化した際の右側の行列を見ます。
そして、元の行列のランクがその次数より小さい場合は逆行列が存在しないという事になります。
それではここまでお付き合いいただき、どうもありがとうございました!