【大学の有機化学】オキサシクロプロパンの開環反応をわかりやすく解説!!

化学

こんにちはー!今回も化学のお話やっていきます。今回のテーマはこちら!

オキサシクロプロパンの開環反応の位置選択性、立体特異性について完全にマスターしよう!

動画はこちら↓

動画で使ったシートはこちら(oxacyclopropane)

では早速行きましょう。

オキサシクロプロパンの反応性

環に含まれる炭素原子はσ結合が4本あってsp3混成軌道なので、安定な結合角は約109.5°なんですけど、実際の環の結合角は約60°になっています。

ここの部分は無理やりよいしょってひずませて輪っかにしてるんで、ここに結合角ひずみエネルギーがたまっています

この輪っかがパカっと開いたときに、そのエネルギーが放出されて、大きな安定化の効果が得られます。

そのため、オキサシクロプロパンは反応性に富んだ化学種になります。

優れた求核剤によるSN2反応

そして、この高い反応性を利用するとSN2反応を起こすことができますので、ここからはそれを紹介します。

例えばオキサシクロプロパンにチオラートを加えるとこのように開環しまして、アルコキシドになります。

最後は水からプロトンを引き抜いてアルコールになります。

この反応では本来脱離能の低いアルコキシドの脱離が起こるので、かなり特殊なことが起こっています。

これが起こるのはオキサシクロプロパンの開環により大きな安定化が同時に起こっているからです。

それで、例えばこんな非対称エーテルの場合はより嵩高くない方に求核攻撃が起こって、こんな生成物が得られます。

この反応を使って例えばアルコールを作ろうとした場合はヒドリド還元剤のリチウムアルミニウムハイドライドを使ってこんな感じに作れます。

Grinard反応剤を使えばこんな風に炭素鎖を長くしたアルコールを作ることもできます。

これら反応剤についてはこちらの記事で解説しています。

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酸触媒でのSN2反応

ここまでは、優れた求核剤が直接オキサシクロプロパンに攻撃するという反応を見てきたんですけど、実は酸性条件下で求核性の小さなアルコールなどを反応させることもできます。

これがその一例なんですが、ここで注目してほしいのが、求核置換が起こっている炭素原子が嵩高い方になっているという事です。

これはなぜなのか、反応機構を見てみますと、まず酸素原子上の孤立電子対でプロトンを受け取りまして、このカチオンの嵩高い方めがけてアルコールが近づいてきます。

アルキル基というのは電子供与性でして、カルボカチオンの安定性を超共役により高めるという事がありますが、ここでも似たようなことが起こっています。

輪っかの正電荷がどっちの炭素原子に偏りやすいか実際に書いて比べてみますと、左側、つまり第三級炭素上に正電荷があったほうが、安定なカルボカチオンに近い構造を取れるので安定であると言えます。

したがって、アルコールはより求電子的な第三級炭素を攻撃することになります。アルコールは本来SN2反応を起こしませんが、この場合は求核攻撃と開環が同時起こりますので、立体特異的な反応となります。

練習問題

はい、本題は以上ですので、恒例の練習問題に行きます。
2-メトキシ-2-メチル-1-プロパノールを2-ブロモ-2-メチル-1-プロパノールから合成するにはどうしたら良いでしょうか、というのが問題です。

答え
実はオキサシクロプロパンを使わない方法もあるんですが、ここでは使った方法をお話しします。

別の方法もぜひ考えてもらいたいんですけど、ヒントを言うなら保護です。

正解はこちらの記事の中にあります。

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とは言っても今回のテーマはあくまでオキサシクロプロパンなので、こっちについて考えます。

オキサシクロプロパンを経由する場合はまずいつものように生成物から逆算していくんですけど、メトキシ基を第三級炭素につけるために酸触媒でメタノールによる開環反応を考えます。

この三員環はハロアルコールに強塩基を加えた分子内Williamson合成によってできます。

Williamsonエーテル合成法についてはこちらをご覧ください。

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最後これをひっくり返してこのように合成戦略を立てることができます。

まとめ

では今回の内容は以上ですので、最後おさらいをします。

今回はオキサシクロプロパンの開環反応についてお話ししました。

オキサシクロプロパンは大きな結合角ひずみエネルギーを持っているので、開環をトリガーに普段起こりにくいはずのアルコキシドの脱離が起こります。

これを利用して優れた求核剤に攻撃させると、より嵩高くない方の炭素原子を中心にSN2反応が起こります。

この反応は位置選択的かつ立体特異的な反応であると言えます。ヒドリド還元剤やGrignard試薬を使った場合にはアルコールを得ることもできます。

そしてもう1個のパターンとして酸触媒の求核置換反応も紹介しました。

こちらでは、始めオキサシクロプロパン中の酸素原子がプロトンを受け入れて、カチオン種になります。

電子供与性のアルキル基がカチオンを安定化させるため、より嵩高い方の炭素原子が求電子的になります。

その結果そっちで求核置換反応が起こるので、優れた求核剤での反応とは逆側の炭素に求核攻撃することになります。

これで終わります。お付き合いいただき、どうもありがとうございました!

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