【大学の有機化学】アルキンの命名法や物性、合成法、反応について、わかりやすく解説!

この記事は約6分で読めます。

こんにちは!

それでは今日も化学のお話やっていきます。

今回のテーマはこちら!

アルキンの命名法、性質、合成、還元、求電子付加反応について知ろう!

動画はこちら↓

アルキンの命名法や物性、合成法、反応について、わかりやすく解説!【大学の有機化学】

動画で使ったシートはこちら(アルキン)

アルキンはアルケンと似た性質が多いため、まだの方はぜひアルケンの記事も見てください!

【大学の有機化学】アルケンの主要な反応(求電子付加反応の立体特異性、位置選択性、オゾン分解など)について、わかりやすく解説!
π結合は、σ結合ほど電子の束縛が強くないため、反応活性な部分となれます。この記事では、そんな特徴を利用したアルケンの反応をまとめて見ていきます。特に、3種類の求電子水和反応やオゾン分解は、他の置換基への変換や炭素数の減少に使える重要な反応なので、ぜひ覚えておきましょう。

それでは内容に入っていきます!

スポンサーリンク

アルキンの命名法

そもそもアルキンとは、炭素ー炭素三重結合を持つ化合物を指します。

両方の炭素に置換基があるものを内部アルキン、片方の炭素に水素が結合しているものを末端アルキンと呼びます。

慣用名

最も単純な構造のアルキンでは慣用名が用いられることもあり、アセチレンと呼ばれています。

置換基がついたものもアセチレンを用いて呼ぶことがあるので覚えておきましょう。

IUPAC名 -主鎖の場合-

IUPAC名では、アルキンが化合物の主鎖に含まれる場合は名前の語尾に-yneを付けます。

よって、下の2つの化合物はethyneと2-buthyneになります。

IUPAC名 -主鎖以外の場合-

主鎖以外に含まれている場合は置換基として名前をつけることになり、そのときに使われるのが-ynyl(イニル)です。

下の化合物の名前は、(S)-エチニルオクタンと2-プロビニルシクロブタンとなります。

IUPAC名 -二重結合も主鎖に持つ場合-

例外として、二重結合と三重結合の両方を主鎖中に持つ化合物はアルケニンと呼ばれます。

このときはアルファベット順にならい、先にアルケンの -ene を、次にアルキンの -yne を付けます。

この化合物の場合は、3-ヘキセン-1-インと1-ペンテン-4-インになります。

スポンサーリンク

アルキンの性質

次にアルキンの性質についてです。

短く強い結合

1つ目の重要な性質は強固な結合です。

アルキンは\(180^\circ\)に開いた構造をしており、4原子が同一直線上に位置しています。

炭素間の距離は\(0.1203\ \rm{nm}\)\(\)で、これは二重結合の\(0.133\ \rm{nm}\)\(\)よりも短く、結合解離エネルギーもアルケンより大きく\(299\ \rm{kcal/mol}\)\(\)もあります。

この短い結合に電子が6つも集まっているため電子同士の反発も大きく、その高エネルギーは溶接などのための熱源として利用されるほどです。

高い酸性度

2つ目の特徴は高い酸性度です。

アルキンの直線的な構造は\(\rm{sp}\)\(\)混成軌道が\(\sigma\)結合を形成したものとして理解でき、炭素同士は1つの\(\sigma\)結合と2つの\(\pi\)結合で繋がっています。

\(\rm{sp}\)\(\)軌道はアルカンの\(\rm{sp}\)\(^3\)軌道やアルケンの\(\rm{sp}\)\(^2\)軌道よりも\(\rm{s}\)\(\)性が強く、その分電子を強くひきつけます。

そのため負電荷を安定化することができ、アルカンやアルケンに比べて酸性度が非常に強くなっています。

その性質を利用したアルキンの合成法もあるので見てみましょう。

スポンサーリンク

アルキンの合成

アルキニルアニオンからの合成

アルキンは酸性度が高いため、n-ブチルリチウムやナトリウムアミドといった強塩基を用いてアルキンの末端水素を引き抜くことができます。

その結果アルキニルアニオンと呼ばれる下のような化学種が生成します。

これはグリニャール試薬と似た性質をもち、ケトンやアルデヒド、エポキシドなどに求核付加してアルキンを合成できます。

また、アルキニルアニオンに特徴的な反応性として第一級ハロアルカンにも求核付加することができます。

ジハロアルカンからの合成

別のアルキン合成法として、ジハロアルカンからの合成があります。

これはアルケンのときを思い出すとわかりやすいと思います。

ハロアルカンに対してターシャルブトキシドなどの強塩基を作用させると、E2脱離が起きてアルケンが得られます。

これと同様に、隣接ジハロアルカンに対して強塩基を作用させると、脱離反応が2回起きてアルキンになります。

この反応は副反応としてアルキンにしたい炭素–炭素結合の反対側で脱離反応を起こす場合があるため、示した例の1つ目では隣接炭素の片方にしか脱離する水素がない化合物を用いています。

2つ目の例では3当量の塩基を加えることで生成したアルキンをアルケニルアニオンまで変換し平衡をアルキン側に偏らせ、水で中和することによってアルキンに戻すなどの工夫をしています。

アルキンの還元

続いてアルキンの還元に移ります。

アルカンへの還元

アルキンもアルケンと同様に\(\rm{Pt}\)\(\)や\(\rm{Pd}\)\(\)でアルカンまで還元することができます。

シス型アルケンへの還元

また、Lindlar触媒という酢酸鉛やキノリンで\(\rm{Pd}\)\(\)の活性を落とした触媒を用いると、アルケンの状態で止めることができます。

Lindlar触媒は不均一触媒の一種であるため、触媒表面で活性化された2つの水素とアルキンの間で反応が進行してシス体のアルケンが得られます。

トランス型アルケンへの還元

トランス体が欲しい場合はどうするかというと、金属ナトリウムを用います。

金属ナトリウムは1電子を放出することで電子が希ガス配置になって安定化するため、強力な電子供与体といえます。

これを液体アンモニアにとかして還元剤とすることで、アルキンをアルケンにすることができます。

反応機構を巻き矢印で書くとこのようになります。

まず、アルキンの\(\rm{p}\)\(\)軌道の1つに電子が与えられラジカルアニオンになります。

この時点で炭素はどちらも\(\rm{sp}\)\(^2\)混成に変化するのですが、立体障害のより少ないトランス選択的になります。

そして、アニオンがアンモニアから水素を引き抜き、もう一度電子移動とプロトン化が起きることでトランスアルケンに還元されます。

アルキンの求電子付加反応

次にアルキンの求電子付加反応を解説します。

ハロゲン化水素・ハロゲンの付加

まずはハロゲン化水素の付加です。

これはアルケンと同様の機構で進行し、ジェミナルジハロアルカンが生成します。

この時位置選択性はマルコフニコフ則に従い、ハロゲンは同じ炭素原子に付加します。

ハロゲン分子の付加も同様に進行し、テトラハロアルカンや隣接ジハロアルカンが得られます。

マルコフニコフ型の水和反応

水和反応では、アルケンのときは硫酸などのブレンステッド酸触媒だけで進行しましたが、アルキンの場合はアルケニルカチオンが不安定で活性化エネルギーが大きくなります。

これにより、二価の水銀イオンや銀イオンなどのルイス酸触媒が必要になります。

また、水和で生成するエノールという構造は不安定なため、反応系中で互変異性化して、より安定な構造であるカルボニルに変換します。

そのため、最終的にはケトンやアルデヒドなどのカルボニル化合物が得られます。

この場合も基本的な反応機構はアルケンへの水和と変わらないため、生成物はマルコフニコフ則に従って得られます。

逆マルコフニコフ型の水和反応

逆マルコフニコフ型の生成物が欲しい場合はこれもアルケンと同様ヒドロホウ素化-酸化反応を用いますが、\(\rm{BH}\)\(^3\)を用いると、アルカンまで還元されてしまいます。

ここでは、ジアルキルボランなどの嵩高いボランを用いることで反応性を抑え、アルケンで止めています。

まとめ

今回の内容は以上です。

間違いの指摘、リクエスト、質問等あれば、Twitter(https://twitter.com/bakeneko_chem) かお問い合わせフォームよりコメントしてくださると、助かります。

それではどうもありがとうございました!

タイトルとURLをコピーしました